スタートアップ企業 弁護士が助けます

  • 企業・産業

スタートアップ企業がこれまでにないビジネスを立ち上げようとする時に配慮しなければならないのが、既存の法律や制度との関係です。そうした問題を解決するため、専門の弁護士がサポートを行う政府の支援策が4月26日にスタートしました。

萩生田経済産業相は記者会見で「法律のプロフェッショナルと経済産業省が連携することで、世界に羽ばたくスタートアップ創出と合わせた抜本的な規制改革に向けて徹底支援を行う」と述べました。

どうして新たな支援策が必要なのか?支援策はどういうものなのか?具体的に解説します。

電動キックボード走行 どうやって規制緩和を実現?

最近、街で見かける「電動キックボード」。キックボードにモーターをつけた乗り物で、事業を立ち上げた当時は、法律で運転免許の保有やヘルメットの着用が義務づけられていました。

そこで、大学のキャンパス内で免許を持たない人を対象に実証実験を行いました。これを受けて行政側は、ヘルメットの着用は任意だとする規制の特例措置を設け、公道での事業化に道を開きました。規制緩和の方針に沿って法律も改正され、将来は免許なしでも利用できるようになります。

この実証実験は「サンドボックス(砂場)」と呼ばれる制度を使って行われました。新たなビジネスについて、地域を限定するなど一定の条件のもとに規制を緩和して実証実験を行う仕組みです。

この制度は4年前から導入されています。砂場で子どもが形を壊しては再び新しいものを形づくるのを親が見守るように、事業化に向けた試行錯誤を行政の目の届く範囲で、安全を確保しながら実際に始めてみるということです。

政府はこのサンドボックスや規制の特例措置を通じて、新たなビジネスが法律などに抵触せずに進められるようにしています。

新ビジネスに法律・規制の“壁” 自力でクリアは難しい…

しかし問題は、規模の小さなスタートアップ企業には法律に詳しい人がいないということです。

スタートアップ企業「DeepX」は人手不足などの問題を解決しようと、AIを使った油圧ショベルの自動運転にチャレンジしています。しかし、自分たちの事業にどんな法律が関わってくるのかや、規制をクリアするために国の制度をどう利用したらいいか、よく分からないという問題があります。

実は、この取り組みを事業化するためには、少なくとも次の法律が関係してくる可能性があります。

例えば「労働安全衛生法」は、建設機械の周囲で働いている人の安全に配慮する必要から関わってきます。また「電波法」はデータのやり取りをする際に関係してきます。これだけ多くの法律があると、いい新ビジネスのアイデアが浮かんでも、しり込みする企業もありそうです。

スタートアップの代表は、チャレンジしていくためには、法律の専門家の力を借りることが必要だと話します。

スタートアップ企業 那須野薫 代表取締役
「安全性や製造物責任「PL法」は大きく関わってくるだろうと考えていたが、例えば電波法など『そういうのも関わってくるんだな』という法律もあって、スタートアップとして自分たちで調べられる範囲だと、なかなか限界があるのを感じている」

新たな事業で必要な規制改革に結びつける

こうした課題を解決しようと、経済産業省はスタートアップ企業がぶつかる法律面などのサポートをする弁護士チームを立ち上げました。大手法律事務所やスタートアップ専門の法律事務所の弁護士11人からなるチームです。

個々の事業について法律や制度面での相談に応じるとともに、こうした活動を通じて集まった具体的な事例をもとに、新たな事業を生み出していくうえで必要な規制改革に結びつけていきたいと考えています。

弁護士 大段徹次さん
「われわれと相談する中で気づきをもってもらう。『そういうところも法的に問題になるかもしれないんだ』というところを頭に入れてもらって、規制を乗り越えていくところを一緒に考えられたらいいなと考えている」

支援策を通じて、法律や規制の壁を乗り越えて新たなビジネスが広がり、日本の経済成長につながっていくことを期待したいと思います。

(この記事を当初掲載した際、電動キックボードの運転について、「特例措置として免許なしで利用できる」としましたが、正しくは、「将来は免許なしでも利用できるようになる」でしたので、記事を修正しました)

(解説委員 神子田章博)
【2022年4月28日放送】