「未利用魚」とは「規格外だったり一般的に知られていなかったりするなどの理由で市場に出回らない魚」のことです。
魚の養殖の現場では大きく育たなかった稚魚が廃棄されていて、課題となっていました。捨てられていた未利用魚を加工品にしておいしく食べてもらおうと、宮城県で取り組みが始まっています。
生産量日本一の養殖ギンザケ 廃棄量は毎年十数トンに
ギンザケの稚魚を育てている養魚場。いけすの中で約3万匹が育てられていますが、そのうち約3%がこの先大きく育つ見込みがなく出荷基準に満たないため、「未利用魚」として捨てられてしまいます。
宮城県のギンザケは日本一の生産量を誇っていますが、稚魚の廃棄量は毎年十数トンに上ると見られています。
煮つけにせんべい 加工に挑戦
捨てられてしまう未利用魚を活用できないかと目を付けたのが、宮城県の水産加工の開発チームです。開発を担当する県水産技術総合センターの阿部真紀子さんは、ギンザケを加工品にすることでおいしく食べてもらおうと考えました。
まず、タンパク質や脂質など魚の身に含まれる成分を科学的に分析しました。その結果「水分が多くて脂肪が少ない特徴がある。味としても淡泊な白身魚」だといいます。
阿部さんはこうした課題を解決するために、加工方法を探りました。例えば濃い味付けをした「煮つけ」は高温・高圧で加工することで柔らかくなり、骨まで食べられます。
また圧縮して水分を飛ばした稚魚の「せんべい」も試作してみました。
阿部さんは試行錯誤を繰り返し、「煮つけ」「せんべい」「フライ」「干物」「魚しょう」「くん製」という計6種類の試作品を作りました。早速チームで試食したところ…。
フライの感想ではこのほか、「骨まで食べられる」「栄養素全部とれますって感じ」といった声が出ていました。
地元の水産加工会社 商品化目指す
阿部さんは、得られた分析結果や試作品の情報を宮城県内の水産加工会社に発信しています。石巻市の水産加工会社では、そのデータをもとにギンザケの稚魚を使った商品開発が始まっています。
取材した日は、煮つけなどの試食を行いました。水産加工会社の代表取締役の水野一樹さんは「味はまあまあいけると思うが、(煮つけの)おなかが割れたりするので、いかに見栄えをよく仕上げるかが課題」と話していました。
この会社では、今後も開発の進み具合を共有しながら年内の商品化を目指していきます。
「とれていた魚がとれない」 持続可能な水産業目指す
阿部さんは次のように話しています。
宮城県水産技術総合センター 阿部さん
「宮城県では、もともととれていた魚種がとれなくなってきている現状にあるので、ギンザケ稚魚などの持続可能な水産加工原料の開発を行って、水産業に貢献したい」
未利用魚は、規格外で出荷できないものだけでなく、地域によっては食べる習慣がないため廃棄されてしまうものも含まれています。
全国では学校給食などで未利用魚を活用しようという動きもあり、限りある資源を生かす取り組みが広がっています。
(仙台局 福田洋介)
【2024年1月30日放送】
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