“未利用魚”に熱い視線 値段のつかない魚もおいしく!

未利用魚」とは何か知っていますか?「利用されていない魚」という意味で、数がそろわなかったり加工が難しかったりして、市場にあまり出回らない魚のことです。

この未利用魚が、水産資源の有効活用の面からいま注目されていて、福岡県では、若手経営者が販路拡大に取り組んでいます。

玄界灘の未利用魚 加工して毎月お届け

マトウダイ

「マトウダイ」や「ミシマオコゼ」、「ミノカサゴ」。あまり聞いたことがない名前の魚ですが、これらは「未利用魚」です。

井口(いのくち)剛志さん(27)は4年前、未利用魚を加工して販売する会社「ベンナーズ」を福岡市で立ち上げました。

井口剛志さん

毎月、その時々の魚を加工した商品を、月額4200円からの料金で全国3000人ほどの会員に届けています。

商品はパックから出してすぐ食べられるように味付けされていて、づけ丼やマリネ、魚のオイル煮など、さまざまな料理が楽しめます。

漁師と価格交渉

地元の玄界灘は豊かな漁場として知られています。しかし漁業者によると、取った魚の3割ほどが未利用魚になってしまうといいます。

井口さんは漁港に漁師を訪ね、未利用魚を、ほかの魚の価格などを参考にして、お互いが納得する形で買い取ります。

取材した日は漁師の宮川友芳さんのもとを訪ね、「ネリゴ(カンパチの若魚)」や「シログチ(イシモチ)」を買い取ろうと交渉しました。

未利用魚の買い取りに応じる漁師の宮川さん

宮川さんは「要るならそっちで引き取ってもいいよ」と応じていました。未利用魚を売ることについて「ゼロが1になる」と、メリットを感じているそうです。

未利用魚の加工販売会社 代表 井口剛志さん
「単純に『もったいないな』とずっと思っていた。全然食べられるのに」

仕入れた未利用魚は、鮮度が落ちないその日のうちに加工されます。加工に使うハーブやしょうゆなども、福岡や近隣の県から調達します。

井口さん
「地域で水揚げされた魚を使い、かつその地域特有の調味料を使って商品を作っていくとおもしろいんじゃないか。まだ食べたことがない魚に出会える楽しさにつながっていく」

イタリア料理の全国チェーンが導入へ

これまで主に個人向けに販売していましたが、ここに来て新たな展開が見えてきました。福岡を中心に全国展開するイタリア料理チェーン「ピエトロ」が、未利用魚を使った新メニューの開発を依頼してきたのです。

井口さんは試作品を持ち込み、このチェーンの江島豊さんや、総料理長の榮田竜二さんに試食してもらいました。

チェーン側からは「ハーブが何種類か混ざっているのか」という質問や、「もう少し薄味にして、ひと手間加えた時にちょうどいい具合になるようお願いするかも」といった声が出ていました。

このチェーンは、種類や量が安定しないという未利用魚の課題をメリットに変えていきたいとしています。江島さんは「お店によって(魚種を)変えたり、限定何品というように、逆に希少価値を上げていく」としています。

井口さん
「かなり前向きなフィードバックをいただけたので安心した。より多くの方に未利用魚の存在・可能性を知っていただける機会をつくっていきたい」

回転ずしでも利用拡大

未利用魚を巡っては、円安で水産物の輸入価格が上がっていることを背景に、回転ずしチェーンなどでも利用を拡大する動きが出ています。

また資源の有効活用などの点から、国も補助金制度を通して利用を後押ししています。
【2022年10月24日放送】
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