全国で書店の数が減少する中、「ひとり」をキーワードに人気を集めている出版社と書店が香川県にあります。人気のわけは?
ヒット作生んだ“ひとり出版社”
高松市の出版社が生み出したヒット作「愛するよりも愛されたい」は、2023年の大手オンライン書店文芸部門のランキングで数々のベストセラー作家を抑え、年間第1位に輝きました。
この本は、万葉集を現代の言葉で読み解く内容です。例えば…
これを現代の若者のことばで読み解くと…
日本最古の歌集の“時代を飛び越えた表現”が、幅広い世代の心をつかみました。
この本の出版社を訪ねてみました。佐々木良さんが、執筆から出版までを手がける“ひとり出版社”です。
佐々木さんはもともと東京の出版社から本を出していましたが、コロナ禍をきっかけに、ひとりで始めてみると、思いがけない効果があったといいます。
執筆にかける期間がすべて自分次第になり、月の家賃も4000円余りと低コストになりました。「肩ひじを張らない環境」が新たな発想につながり、1億5000万円を超える売り上げになりました。
ひとりで出版社を経営する 佐々木良さん
「しがらみはない。自由に書き上げたところで(本を)出す。“地方でやってる自由さ”というのが、結構世の中に受け入れられたのかな」
“ひとり書店”の本棚から生まれる地域の交流
香川県丸亀市には、ユニークな取り組みで注目されている書店があります。ひとりで経営する藤田一輝さんは、地域のコミュニティーをつくりたいと空き事務所を活用し、“ひとり書店”を立ち上げました。
この書店の特徴は、一般の人に本棚のスペースを貸し出す仕組みです。スペースを借りたオーナーは、自分でセレクトした本を置いて販売することができます。
そして営業中は、店番も本棚スペースのオーナーが行い、訪れた客との交流が生まれています。客の一人は店内で会話しながら「皆さんすごくおもしろいので、本だけで人柄が分かりそう」と話していました。
ひとりで書店を経営する 藤田一樹さん
「(ひとり書店が)どれくらい成り立つのか未知数だったが、予想以上に人が集まってくれている。続けていけばいくほど、つながった方々が、この地域でいろんなことをやっていくような形になったらいいなと思う」
ひとりで経営することは、自分の色や大胆な発想など、組織の中では埋没しがちなことを、思い切って表現できることにつながっているのかもしれません。そうした点が人々の人気を集めているようです。
(高松局 竹内一帆)
【2024年1月26日放送】
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