図鑑や絵本といった、これまで主に子どもを対象にしてきた書籍。その世界観を生かして大人も取り込もうというビジネスが広がり始めています。
大人が楽しむ デジタルな図鑑の世界
東京・銀座の「ずかんミュージアム銀座」では1月から、大人向けの「ナイトミュージアム」を金曜限定で行っています。
動物などの図鑑を出版する会社やデジタルコンテンツの企画・制作を行う会社などが手がけ、図鑑に載っているさまざまな生き物の生態をデジタル技術でリアルに再現しています。
例えば、アフリカに生息するという「アルマジロトカゲ」。危険を察知すると自分の尾をくわえて丸くなり、硬いトゲで身を守る姿勢をとります。
この施設は昼間も営業していてメインターゲットは家族連れです。しかし、大人だけの客も想定以上に多かったことからナイトミュージアムを始めました。
ナイトミュージアムに入場できるのは20歳以上で、お酒も提供しています。ある女性客は「その場にいるぐらいのリアリティーがある」と言います。また男性客の一人は「童心に帰りつつも、お酒を飲んで、大人ならではの楽しみ方なのかなと思う」と話しました。
ミュージアム 宮野治彦プロデューサー
「大人にもある知的好奇心を、このミュージアムは刺激する。大人の方がもっと学べるプログラムをつくっていきたい」
絵本のグッズ開発に力 売り上げ相乗効果も
絵本の世界観を生かして大人を取り込もうとするビジネスも広がり始めています。大手書店の「丸善ジュンク堂書店」が新しい業態として始めた東京・千代田区の店舗では、絵本に加えて作品をモチーフにした文具や雑貨などのグッズを扱っています。
絵本やそのキャラクターには大人のファンも多く、ニーズをつかめると考えたのです。女性客の一人は「自分が小さいころには(グッズは)なかったので、大人になって『懐かしい』『欲しい』と思った」と話します。
絵本はこれまで、グッズ開発が積極的に行われていませんでした。この書店は出版社や作者と直接交渉し、絵本の世界観を大切にして商品化しているといいます。
この店では、グッズとの相乗効果で絵本の売り上げも通常の店舗の3倍になったといいます。書店ではこの業態の店舗を大阪や福岡でも展開しています。
大手書店 篠田晃典 執行役員
「グッズを買ってから本を買ってもいいし、本を買ってからグッズを買ってもいい。そういう幅ができたのは非常に大きい」
書籍の販売額が減少している中で、児童書はロングセラーが多く堅調です。児童書の関連ビジネスがどのように広がるか注目です。
【2023年5月9日放送】
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