「TGC」も注目! “尾州ウール”

「東京ガールズコレクション(TGC)」がプロデュースしたファッションショーで「尾州ウール」の衣装が登場。愛知県一宮市でつくられる毛織物に、世界の有名ブランドからも注文が相次いでいます。世界を魅了する、こだわりの生地とは?

明治の機械で生まれる風合い 世界を魅了

愛知県一宮市の神社で行われたファッションショー。尾州ウールの衣装を着たモデルが登場したほか、歌手の平原綾香さんも尾州ウールでつくられた1点ものの羽織を身にまとって現れました。

ランウェイで紹介されたのが、衣装の生地を作った足立聖さん。50年余り尾州ウールを織りあげてきた職人です。

足立聖さん(中央)

足立さんがこだわる尾州ウールの生産に欠かせないのが、明治時代に生まれた「ションヘル織機」です。

小さな隙間に糸を1本ずつセッティングし、その数は1万本を超えることもあります。

織るのに時間がかかりますが、繊細な織り柄も表現できて、やわらかな風合いに仕上がります。

尾州ウール職人 足立聖さん
「(最新の機械なら)1時間ぐらいでできる話が、(ションヘル織機だと)1日かかっても終わらないというのが本当の話。もう、はっきり言ってめんどくさい」

ただ、この細かな生地の風合いが世界から高い評価を受け、有名ブランドからの注文も相次いでいます。

「シャネル、エルメス、ディオール…」。注文された生地を手にする足立さん

技術を次世代へ

生産効率が悪いションヘル織機は、使用する職人がほとんどいなくなっています。

こうした技術が失われることに危機感を抱いたのが、一宮市で生地メーカーを営む小塚康弘さんです。技を残したいと、6年前に足立さんを自分の工場に迎え入れました。

小塚康弘さん(左)と足立さん

さらに若い世代にもつなげるため、新たに2人を採用しました。若手男性社員は「世界中探しても、足立さんしかつくれない生地がある」と話します。

生地メーカー経営者 小塚康弘さん
「人の感情に訴えるような生地。これがなくなってしまうのは、やっぱりさびしい。人に感動を与えるような機会というのを続けていきたい」

端材を使った新しい取り組みも

足立さんは今、尾州ウールの可能性を環境面などにも広げたいと、捨てられる端材を織り込んで生地をつくる新たな取り組みも始めています。

足立さん
「(織物は)縦糸と横糸しかない。たったそれだけの話の中にどれだけ違ったことをできるかを考えてくださいというのが織物。特にションヘル(織機)を使ってやる織物のつくり方の楽しみ、おもしろさ」

手間がかかる分、ほかにはない価値が生まれている尾州ウール。足立さんの織物へのこだわりが、次の世代につながることを期待します。
(名古屋局 小牧支局 田川優)
【2023年12月8日放送】
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