中国EV戦略 狙いは欧州

中国の大手自動車メーカーが手がけるEV=電気自動車の高級ブランドが、脱炭素社会に向けEVの普及を進めるヨーロッパ市場へ攻勢を強めています。

世界最大の自動車輸出国は、2022年は日本でした。しかし2023年10月末時点では世界的なEVの需要の高まりを受けて、日本の輸出台数359万台に対し中国が392万台となり、中国が初めて世界最大の自動車輸出国になることがほぼ確実です。

デザイン・性能・価格 欧州に売り込む

スウェーデンの首都ストックホルムに11月、中国の大手自動車メーカーが立ち上げた高級EVブランド「ZEEKR」のショールームがオープンしました。

展示されているEVのデザインは、かつてフォルクスワーゲンに在籍して人気車種を生んだデザイナーが手がけました。

展示された中国メーカーのEV
内装

来場者の一人は「見た目はポルシェとか、欧州メーカーが製造したように感じる。中国製とは思えない」と話しました。

メーカーによると航続距離などの性能はヨーロッパの競合モデルを上回るとしていますが、価格は1000万円前後と、EVのスポーツカータイプとしては低く抑えています。

AIなど導入 最新工場で効率アップ

販売戦略を支えているのが「インテリジェント・ファクトリー」。多くの工程にAIなどの最新技術を導入した中国国内の工場です。

中国・浙江省にある工場では、1台1台オーダーメードでつくる車の部品を自動で搬送し、効率が30%向上したといいます。

自動で部品を搬送

溶接の工程では、700台以上のロボットが休みなく動き続けていました。最新鋭の設備を武器に、価格競争力を維持しながら性能の向上につなげています。

700台以上のロボットで溶接

中国の自動車メーカー EVブランド ラルフ・ステンガーさん
「われわれの自動車は非常に高性能な情報・娯楽システムを搭載し、運転支援システムも非常に高速なため、車内で完璧な体験を提供できる」

懸念強める欧州メーカー

EUはこうした中国勢の攻勢に懸念を強めています。10月、中国勢のEVが国からの補助金で価格を安く押さえているとして調査に乗り出したと発表しました。

フランスの大手自動車メーカー、ルノーも警戒感を隠しません。

フランスの大手自動車メーカー ルカ・デメオCEO
「(中国メーカーは)コストや技術に非常に競争力があり市場の需要もある。私たちは対抗しなければならない。当然、公正な競争の場を確保する必要がある」

ルカ・デメオCEO

中国メーカー 「勝つと信じている」

こうした懸念に対し中国メーカーは、価格ではなく、正々堂々性能で勝負していくと強気な姿勢を示しています。

中国の自動車メーカー EVブランド 林金文 副社長
「最終的にどの車を選ぶかは消費者が決めるが、中国のEVが勝つと信じている。そのために私たちも多大な努力をしている」

林金文副社長

気になるのは、日本の自動車メーカーとの競争の行方です。中国のEVメーカーの中には、ヨーロッパだけでなく日本の自動車メーカーの牙城とも言える東南アジアへ進出を加速させているところもあります。日本メーカーとしても、何か思い切った手を打つ必要があるかもしれません。
(中国総局 下村直人、ヨーロッパ総局 有馬嘉男)
【2023年12月7日放送】
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