ヒトデを材料にした塗料でカラスを追い払う?抽出した成分には抗菌効果も?ヒトデからビジネスの可能性が広がっています。
日本沿岸に約300種類が生息し、漁をする際に網にかかったりホタテを食べてしまったりと、漁業者にとって“やっかい者” のヒトデが、アイデア次第でさまざまな困りごとを解決する可能性が出てきました。
ヒトデの塗料でカラスが退散?
東京・台東区の区役所では屋上を企業に貸し出してビルの緑化方法を展示しています。
しかし、困ったことがありました。カラスです。
緑地を管理する企業 関根大樹さん
「(カラスが)コケをついばんで捨てるとか、ほじくり返されるとか、そういった被害があった」
そこで、カラスよけに使っているのが、ヒトデを材料にした塗料です。春から花壇のふちにこの塗料を塗ったところ、カラスが寄りつかなくなったといいます。
漁業の“やっかい者”が持つ意外な特徴
なぜカラスよけの効果があるのでしょうか。ヒトデの成分を抽出した液体に紫外線をあてると、光ることが分かっています。
紫外線は人間には見えませんがカラスには見えるとされていて、これを塗ると、景観に影響を与えずにカラスを追い払えるというわけです。
この塗料を開発したのは、北海道の札幌市の廃棄物処理業者です。きっかけは約10年前、「海沿いの自治体がヒトデの処理に困っている」と相談を持ちかけられたことでした。
この企業は、試しにヒトデを米ぬかなどと混ぜて分解し、肥料に加工しました。すると、それにカラスが寄りつかないことに気づきました。
そこでカラスよけの塗料などに商品化しました。札幌の時計台の屋根などに利用されています。
ヒトデを活用する企業 三國康二 代表取締役社長
「もっと需要が増えれば(ヒトデを)現場で買って処理させてもらって、原料をつくるローテーションが生まれる」
抗菌効果も?石けんも登場
この企業によると、ヒトデから抽出した成分にはほかにも効果があるといいます。カビに塗って培養したところ、塗っていない箇所よりも繁殖が抑えられたそうです。
企業は早速ヒトデの成分が入った石けんを商品化し、抗菌効果があるとして販売を始めました。
スリランカのデング熱の流行を抑えたい
この企業に11月、スリランカの子どもたちを支援しているNPOの代表が訪ねてきました。
スリランカの子どもたちを支援するNPO 大下敦子 理事長
「スリランカは雨季が2回あって、そのあとに水たまりがたくさんできるので蚊がいっぱい発生してしまう」
スリランカではデング熱が流行し、感染者は6万8553人(1~10月、出典:国立デング熱管理プログラム)と6万人を超えています。
そこで、現地の子どもたちにヒトデを活用した石けんを使ってもらい、予防に効果があるか検証することになりました。
ヒトデを活用する企業 三國 代表取締役社長
「未利用資源と言われているヒトデを有効活用して、(デング熱がスリランカで)深刻な社会問題になっているということなので、うちの技術でやってあげられることはある」
ヒトデを活用したビジネスは、ほかの企業でも行われていて、ヒトデを乾燥させてシカやイノシシ除けの商品として販売しているそうです。研究次第で、まだまだ多くの用途があるかもしれません。
【2023年12月4日放送】
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