危機かチャンスか 変わる自動車産業

東京モーターショーから名称が変わった「ジャパンモビリティショー」が26日から始まります。日本の自動車業界はEVシフトなどの大きな変化に立ち向かおうと、新たな開発に挑んでいます。

変速機は必要なくなる?車部品メーカーの危機感

静岡県富士市にある自動車部品メーカー。急速なEVシフトで変革を迫られています。

会社の売り上げの9割を占める主力製品は自動車メーカー向けの変速機です。しかし、この部品はエンジン車向けで、EVになると今生産している変速機は必要なくなってしまうと会社では考えています。

現在の主力はエンジン車向けの変速機

エンジン車は数万点の部品で構成されています。しかしEVになると、必要な部品は大幅に減ります

自動車部品メーカー 佐藤朋由 社長
「危機感を大きく持っている。電動化に切り替わるスピードが、われわれが思っているより早いので(このままでは)どんどん淘汰される」

既存設備で電動アシスト自転車のギア生産

そこで、まずこの会社は、電動アシスト自転車のギアを開発しました。変速機の生産設備をそのまま使って生産することができました。

変速機の生産設備をそのまま使って生産

EV用基幹部品に参入へ

その間に抜本的な対応も急いでいます。モーターなどを組み合わせたEVの動力にあたる基幹部品の自社開発に乗り出し、2025年には完成させたいと意気込んでいます。EVに対応した生産設備の準備も進めています。

佐藤社長
「『ピンチはチャンス』とよく言う。できればチャンスに変えようという思いでやっている」

高度なAI使いEV開発 スタートアップが挑む

新たに自動車産業への参入を狙う企業もあります。千葉県柏市のスタートアップ企業は自動運転のEVの開発を進めています。

最大の強みは高度なAI=人工知能を使うことです。トップ棋士に勝ったことで知られる将棋AIの開発者を筆頭に、自動運転の頭脳部分を作っています。

自動運転の頭脳部分を作る

スタートアップ企業 山本一成CEO
「人工知能が社会に活躍できる場所、もっと大きなインパクトを起こせる場所はどこかと考えていくと、やっぱり自動運転が大きなチャレンジだなと」

この会社の自動運転技術で使うのは車に搭載したカメラだけ。センサーは使っていません。カメラの映像をAIで分析します。

車線の「右と左にある白線をカメラの画像から読み取って、『ここに白線がありますよ』と認識している」と言います。

AIが進路を選択する。「手はハンドルに添えているだけ」
状況によって人がハンドル操作する

「テスラを超える」 完全自動運転車開発へ

この会社はモビリティショーにコンセプトカーを展示。2028年には、ハンドルがない完全自動運転車を完成させることを目指しています。

山本CEO
「テスラを超えることを目指している。われわれみたいな会社が大きくなって、成長シナリオをどんどん描いていくのがすごく大事」

最近では、三菱自動車工業が中国から撤退する方針を固めました。変化に対応できなければ一気に厳しい立場に追い込まれてしまうのが今の現実です。日本の自動車メーカーはこれまで以上に強い危機感を持って対応できるか、問われています。
(経済部 野口佑輔)
【2023年10月24日放送】

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