木そのものを発酵させてアルコールを造ろうー。国産の木材に高い付加価値をつけようと、“世界初の酒”を開発する取り組みが行われています。
ミズナラ・スギ・シラカバ… 木の酒続々
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木の酒の開発を進めているのは、森林について調査・研究を行う国の研究機関「森林総合研究所」(茨城県つくば市)です。酒の原料は穀物や果物が主流ですが、さまざまな樹木から造ったところ、木そのものの香りが生きた、これまでにないお酒に仕上がったといいます。
早速、ミズナラから作った酒の香りをかいでみると…。
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ウイスキーのような香りがしました。研究員の人が「ミズナラはウイスキーの貯蔵だるの木として使われているので、そういう香りがあるかもしれない」と教えてくれました。
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国産木材に新たな活路を
木の酒の開発に携わった大塚祐一郎主任研究員に開発のねらいを聞いてみると、輸入木材に押されてピーク時から大幅に価格が下がった国産木材に、新たな活路を見いだすことだと言います。
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森林総合研究所 大塚祐一郎主任研究員
「国産材の高付加価値化、林業の成長産業化、地域振興につながる」
世界初の技術とは?
世界でも例のない挑戦。課題は、アルコールを造るために必要な成分をどう取り出すかでした。
木にはセルロースという繊維質の物質が含まれており、分解すればアルコールの元になります。しかし、硬い細胞壁の中にあるセルロースを取り出すのは簡単ではありません。樹木を1000分の2ミリ以下のサイズまで砕かなければならないからです。
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そのために使うことにしたのが、重みのあるセラミックスで作られたビーズです。
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するとビーズが何度もぶつかることで細胞壁が壊れ、セルロースを露出させることに成功。世界で初めて木の酒造りが可能になったといいます。
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この技術を使って、地域の特徴的な樹木から造った酒や、木が持つ歴史を売りにした酒などが全国各地で生み出されることを期待しているといいます。
大塚主任研究員
「そこの地域で長い間育ってきた木を自分の体の中に取り込む、そういうイメージを膨らませながら、もう一度(国産材の)魅力を再発見していただく機会になればいいと思う」
都内のベンチャー 数年以内の販売目指す
研究所で造られた木の酒は試験製造の段階ですが、これまでの安全性試験で問題となるデータは確認されていないということです。
木の酒の一般販売は、東京都内のベンチャー企業がこの技術を使って数年以内の実現を目指しているということです。
(つくば支局 丸山彩季)
【2023年10月18日放送】
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