ユルく音楽を楽しむ

楽器店の売り上げは、コロナ禍で音楽教室や部活動が停止したことなどで大きく落ち込み、その後も元の水準に回復できていません(民間調査会社調べ)。

こうした中、より多くの人に手軽に演奏や作曲を楽しんでもらおうという取り組みが音楽業界で始まっています。

鼻歌で…サックス演奏!?

 

渡部圭司キャスターが、東京都内の大手音楽会社「ソニー・ミュージックエンタテインメント」を訪ねました。体験させてもらったのは、現在、開発中だというサックスのような楽器です。

鼻歌を音声認識技術によって瞬時にサックスの音に変換して、演奏を実現しています。

この企業は、演奏する技術がなくても楽しめる楽器を次々と生み出しています。例えば、手旗信号のようなポーズをとると、和音のコードを奏でることができる楽器も開発しています。

どちらも商品化は未定ですが、音楽の世界に飛び込むハードルを下げることで、新たな需要を喚起しようと考えています

セッションも!

大手音楽会社 梶 望さん
「『楽器を弾きたい』と思っている人がいる。そこはまだブルーオーシャン(未開拓市場)なんじゃないかと私たちは思っていて、一つのビジネスチャンスというか、いろいろトライをしているところ」

あなたのメロディーを誰かがアレンジ プロデュースも視野に?

手軽に作曲できるサービスの開発も進められています。音響機器メーカー「JVCケンウッド」が実証実験を行っているサイトに参加すると、見知らぬ人と力を合わせて一つの曲を生み出すことができます。

実験の参加者の一人で音楽スクールに通っている八川卓矢さんは、このサイトに、自分で考えたメロディーを発表しました。

実証実験に参加した八川卓矢さん

すると、興味を持った人たちがさまざまな楽器でアレンジを加え始めました。最初に参加したのは、ドラムとベース。その後、ギターや弦楽器で参加する人も登場し、いろいろなアイデアが重なって一つの曲が完成しました。

曲に参加した人たちも、どんどん変化していくことに喜びと驚きを感じたと言います。

最初のメロディーを提供した八川卓矢さん
「自分の想像していたものとは本当に全然違うものになって作品が一つ出来上がったのは、すごくいい経験だった」

ストリングスでアレンジを加えた「小菅こんにゃく」さん
「自分が何か出来るかと考えたときに、色々なアイデアが自然とわいてくるメロディーだった。またアイデアを足すと、それにさらに次の人が思いもかけない要素などを足してくれて、それによって曲のあり方がどんどん変わっていくことがおもしろいなと感じた」

ギターでアレンジを加えた天木教博さん
「ピアノだけのメロディーだった時は興味がなかったが、ストリングスが入ったことで急に魅力的なメロディーになったので、ギターで参加した。自分が知らない人にインスパイア(触発)されたことに驚きもあった」

サイトにはこう書かれている

サイトを運営する音響機器メーカーは、生み出した音楽を配信したり、新たな才能を発掘してプロデュースしたりするなどのビジネスを見据えています

音響機器メーカー 岩城明英さん
「物(音響機器)を売るだけだとなかなか強いブランドにはならなくなってきている。ユーザーと濃くつながるサービスは持っておく必要がある」

楽器は、はじめの音がうまく出せなくて、せっかくやる気があっても挫折することもあります。デジタルのサポートがあれば、音楽へのハードルが下がります。演奏して楽しいと感じる経験が、楽器を本格的に始めたいというきっかけになるかもしれません。
【2023年10月2日放送】
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