日本アニメをサウジアラビアへ売り込め 大手音楽会社が中東エンタメ市場に活路

 コロナ禍で収益が落ち込む大手音楽会社が、日本のアニメ業界とタッグを組み海外に活路を見いだそうとしています。注目しているのが中東・サウジアラビアです。

2か月で数十万人の来場見込むアニメイベント

サウジアラビアで開かれている日本アニメのイベント。「ガンダム」や「進撃の巨人」などの人気作品が結集して7月まで約2か月間開催され、数十万人の来場を見込んでいます。

来場者の一人に好きなアニメを聞いてみると、日本語で「『NARUTO』ですね、本当にすばらしい」と笑顔。子ども連れで訪れた来場者は「家族全員で楽しんでいる」と話していました。

サウジアラビアでは長年、娯楽が制限されてきましたが、石油依存からの脱却を目指した経済改革の一環で、海外のエンターテインメントの解禁を進めています。

娯楽産業の市場は2030年までに1400億円を超えるという予測もあります。

脱・音楽頼み 新たな柱にアニメ

このサウジアラビア市場に目をつけたのが、大手音楽会社「エイベックス」です。収益の柱だった音楽ライブがコロナ禍で中止となり、売り上げが大きく落ち込みました。

音楽頼みのビジネスから脱却を図るために経営の柱の一つに据えたのが、日本のアニメでした。

体験型のアトラクションやグッズショップの展開など、これまで培ったイベントでの集客力を武器に新たなビジネスを展開したいと考えています。

大手音楽会社 執行役員 髙橋俊太さん
「映像の部分だけではなくて、ほかの360度でのアニメの楽しみ方を新しい形でどんどん展開できればいい」

業界の垣根を越えてタッグ 企画続々

この会社がサウジアラビアに進出する足がかりとなったのが、3年前、経済改革のなかで開かれたイベントを任されたことでした。

今回のアニメイベントに手応えを感じた現地のイベント会社「セラ社」と、次の企画の検討を始めています。

サウジアラビアの人たちは「より多くの体験、より大きなスケールの体験を求めているのか?」。音楽会社の髙橋さんが質問すると、現地のイベント会社のモヒ・ナザールさんは「イエス。アニメに関するイベントやエンターテインメントをもっと提供したい」と答えました。

また音楽会社は、日本のキャラクターを手がける企業を訪問してさらなる協力を呼びかけています。

サウジアラビアのイベント会場の画像を見せながら「マスコットのショーをここでやりたい」と持ちかけた音楽会社の髙橋さん。「サンリオ」の常務執行役員の齋藤陽史さんは「夢のようですね、体験型もいい」と応じました。

キャラクターを手がける企業 齋藤陽史さん
「われわれにない強みを持っているので、私たちもぜひアクセス(利用)させていただいて、今までにない形のエンターテインメントを提供できれば」

大手音楽会社 髙橋さん
「僕たちが先陣を切って新しいマーケットに突入していく。皆さん(アニメ業界)がコンテンツを提供しやすい環境をつくる。それが僕たちができるいちばんの仕事かなと」

日本のアニメを、業界の垣根を越えて海外に売り込む。音楽会社は中東やインドなどにまだ開拓の余地があるとみて、新たなビジネスの展開を目指しています。
(経済番組 ディレクター 新野高史、経済部 記者 保井美聡)
【2022年6月8日放送】