台湾 加速する先端半導体生産

台湾は、ほかの企業から半導体の製造を任される受託生産の分野で、世界の60%を占める半導体製造の集積地です。現地では「先端半導体」の生産が加速し、日本企業も関連産業で積極的に進出しています。

「台湾のシリコンバレー」 次世代半導体生産へTSMCが工場建設

TSMCが建設を進める先端半導体の新工場

台湾のハイテク産業の中心地「新竹サイエンスパーク」。「台湾のシリコンバレー」と呼ばれるこの場所に、半導体大手TSMCが本社を置いています。この企業は、今ある工場のすぐ横で最先端の半導体の工場を建設中です。

新工場で生産されるのは、回路の幅が2ナノメートルの半導体です。1ナノ=1ミリメートルの100万分の1です。半導体は回路の幅をできるだけ細くして性能を高める技術が重要です。

16ナノ以下は先端半導体と呼ばれ、高性能スマホや5Gの通信などに使われます。2ナノは、まだ世界のどの企業も量産できていません。

AI向け半導体も強化

そして今この企業が力を入れるのが、急速に利用が広がる生成AI向けの半導体です。この会社はAIを動かすサーバー向けの半導体などの生産に向け、さまざまな機能を一つにまとめる「先端パッケージング」と呼ばれる技術に対応した新工場を6月に開設しました。

日本の関連企業も投資を加速

日本の企業も台湾での投資を加速しています。半導体を衝撃などから保護する「封止材」の世界シェアが4割を占める「住友ベークライト」は、現地に新たな工場を建設し、年内にも生産能力を2倍にしたいとしています。

日本企業が台湾で建設する封止材の新工場の現場

最先端の半導体は熱がこもりやすく、高い放熱技術が必要となります。この会社の社内会議では、台湾の担当者が「ビッグデータの時代は発熱対策が絶対に必要」と説明。これに対し日本の担当者は「当社は台湾内で、研究開発から生産まで全部一括でできる」と話していました。

半導体の「封止材」

台湾住友ベークライト 楢村光昭 総経理
「このまま台湾企業は成長し続ける。わたしたちは生販研(生産・販売・研究)の機能をますます強化し、地産地消の力をさらに増大させていく」

生き残りへ“品質”と“対応力”がカギに

日本企業が半導体ビジネスで生き残る条件について、専門家は次のように指摘します。

みずほ銀行 産業調査部 益子博行シニアアナリスト
「新しい技術に、まずは品質でクリアするものを提供する。(台湾の半導体大手に)速いスピードで対応していく。体制をいかに台湾で築いて継続していけるかというところが大事だと思う」

(国際部 山田裕規)
【2023年9月21日放送】
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