

「水素」は燃やしても二酸化炭素を出さず、脱炭素社会の実現に向けた次世代エネルギーとして注目されています。しかし、製造や輸送などにコストがかかるのが課題です。
こうした課題と向き合い水素を身近なものとして活用しようと、ベンチャー企業などが動き出しています。
「乾電池感覚で」持ち運びできる水素

神戸市で9月初めに開かれた展示会で、持ち運びできるカートリッジ式の水素が紹介されました。名古屋市のベンチャー企業「ABILITY」が、水素で発電して走る燃料電池車などで活用しようと開発を進めています。

水素を供給する水素ステーションは、まだ数が少ないのが現状です。そこでカートリッジに充てんして持ち運ぶことができれば、需要が見込めるのではないかと考えました。開発しているカートリッジの重さは約8キロです。
展示会に訪れた人は「簡単に燃料を入れ替えできるのは魅力がある」と話しました。

会社は今後、実証実験を行って、カートリッジ1本で約100キロメートル走行できるようにする計画です。
また車だけではなく、ドローンなどさまざまなモビリティーで活用することを想定しています。
カートリッジ式の水素を手がけるベンチャー企業 冨士元雅大CEO
「一般用の家庭コンロで使うガスボンベと同じ程度の安全基準を想定しているので、乾電池のような感覚で水素を使うことができていくと思う。市場の広がりを期待している」
廃アルミから水素製造 「地産地消」で脱炭素目指す
水素を自前でつくることで脱炭素にかかるコストを抑える取り組みもあります。富山県高岡市のベンチャー企業「アルハイテック」は、アルミ缶などから水素を製造する装置を開発しました。

つくり出した水素はボイラーの燃料として使い、温浴施設のお湯を沸かします。この装置を使って施設内で水素をつくれば、外部から輸送するコストがかかりません。

原料のほとんどは廃棄物として回収されたアルミ缶やアルミの切りくずなどです。原料に廃棄物を使うことでもコストを抑えられます。
このアルミ缶などに独自に開発した特殊なアルカリ性の液体を合わせると、二酸化炭素を排出することなく水素をつくることができます。


水素を製造する装置を開発したベンチャー企業 水木伸明 社長
「われわれは地産地消でやっていこうという発想。多くの皆さんに使っていただけるようなビジネスモデルをつくって前へ進みたい」
日本は2017年、世界に先駆けて「水素基本戦略」をまとめ、リードしていましたが、今は海外勢に急速に追い上げられています。政府は水素の技術開発などに官民で15兆円を超える投資を行うとしていて、着実な実行が求められています。
【2023年9月13日放送】
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