イギリス 食料品価格高騰で“苦肉の策”

日本でも食品の価格が高騰していますが、イギリスでは厳しいインフレの中で生活を守るために、苦肉の策がとられています。

寄付減少で品薄になったフードバンク

ロンドンにある「フードバンク」の倉庫。主に生活が厳しい人に無償で食料を提供しています。食品価格が上昇する中、このフードバンクはこの1年で20%ほど利用者が増えたそうです。しかしインフレの影響で寄付が減り、2022年に比べて半分ほどしか食料がなく十分に確保できないといいます。

フードバンクを運営 クリス・プライスさん
「通常、私たちは3~4か月分の食料を確保することを目標としている。今は1か月半~2か月分しかない」

深刻なインフレの要因は?

イギリスはユーロ圏やアメリカと比べて、依然としてインフレが深刻な状況です。中でも7月の食料品などの価格は前の年の同じ時期と比べて14.8%上昇し、上昇率は2桁を超えています。

スーパーの店内

大きな要因として、イギリスがEU=ヨーロッパ連合が離脱したことで輸入食品の通関に関する書類手続きが増え、手間がかかる分を価格に転嫁したことや、移民の受け入れが厳格化されて労働力の確保が難しくなったことが指摘されています。

輸入食品の通関に関する手続きが増え、手間がかかるようになった

「どれくらい値上がりした?」 統計局サイトが節約の助けに?

価格上昇率をチェックできるウェブサイト

物価指標を取りまとめるイギリスの統計局は苦肉の策として、食品ごとの価格上昇率をチェックできるウェブサイトを立ち上げました。

例えば、オリーブオイルの価格は42%、砂糖は54%上昇しています。食品価格がそれぞれどのくらい上昇したのかを項目ごとに確認できるため、何を買って節約につなげるか、考えるツールに使ってほしいとしています。

無料で食品をシェアするアプリ 350万人超が利用

食品を誰もが無料で手に入れられるアプリも、インフレで注目されています。自宅や飲食店などで余った食品をアプリに投稿してシェアする仕組みで、店からはボランティアが食品を配送します。

余った食品を撮影して…
アプリで投稿、シェアする

アプリを立ち上げた サーシャ・セレスティル・ワンさん
「“生活費危機”の今、新鮮な食品を無料で入手できることはこれまで以上に重要だ」

このアプリと連携しているパン屋を訪ねると、閉店間際の店内にはまだパンが残っていましたが、アプリに投稿することで、その日のうちに欲しい人たちに行きわたるといいます。

アプリと連携するパン屋 マシュー・レイナ―さん
「パンが残っても捨てることなく、活用できるサービスがあるのはいいことだ」

物価高と食品ロスという社会問題をうまくクリアするこのアプリの利用者数は、イギリス国内だけで350万人を超えているということで、インフレの厳しさを物語っています。
(国際部 大石真由)
【2023年9月7日放送】
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