腰の手術が変わる? 和歌山発 地元メーカーの技術を医療に生かす

和歌山市の病院で、これまで大がかりだった腰の手術を、内視鏡を使ってより安全に、より簡単に行おうと、治療法の開発が進んでいます。地元メーカーの技術を生かして手術に使う器具を改良し、治療法の普及を目指しています。

腰の内視鏡手術 器具の使いにくさが普及の“壁”に

和歌山市にある整形外科病院は、腰の骨が変形して神経を圧迫する「脊柱管狭さく症」などの治療に内視鏡を使った手術を導入していて、全国各地から患者が訪れています。手術を担当するのは、この分野の国内第一人者の吉田宗人医師です。

腰の内視鏡手術は、背中に小さな穴を開けて患部の治療を行います。出血が少なくて済み、患者の負担を減らすことができるといいます。

吉田宗人医師

吉田宗人 医師
「切ったりしたら痛いから安静をしばらくしないと動けない。内視鏡でやると傷が小さいから(手術した)その日から麻酔が覚めたら動ける。非常に患者さんにとって(利点が)大きい」

この手術でカギになるのは、患部まで穴を通す「レトラクター」という器具です。従来使われてきた器具は真っすぐにしか入れられず、自由に動かすことが難しい構造でした。器具が使いにくいことが、内視鏡の手術の普及が進まない理由の一つになっていたのです。

レトラクター。「真っすぐの筒だけだと入る内視鏡の角度が制限される」という

地元メーカーと連携 改良を実現

地元メーカーと話す吉田医師(左)

そこで吉田医師は、地元の金属部品メーカーと手を組みました。このメーカーはニット製品の編み機に使われる部品を製造していて、金属を丸く滑らかに加工する技術を持っています。

 

この加工技術を生かして、内視鏡手術の器具のレトラクターを改良しました。筒の一部に丸みをつけることで、背中に入れてからも角度の調整ができるようになったのです。

吉田医師
「自由度が増してくるくる動く。ジョイスティックのように動く。飛躍的に(手術が)やりやすくなった」

治療法普及に道ひらく

改良した器具による治療実績はすでに約100例に上っています。吉田医師はほかの医療機関からの研修も受け入れて内視鏡手術の普及を目指しています。

改良されたレトラクター

器具を改良した金属部品メーカー
「患者さんのためになっているんだな、というのが吉田先生のことばから私たちにも伝わってくる。われわれもモチベーションを保って『いいものを作っていこう』と」

吉田医師
「より多くの人に(この治療法を)知ってほしいし、多くの医師が使うことによって、より困っている患者さんが安全に手術を受けられるようになってほしい」

内視鏡による腰の手術は厚生労働省の認可を受けて健康保険も適用されるということです。地方には独自の高い技術を持つ企業が多くあります。医療との連携が広がり、治療の選択肢が増えることが期待されます。
(和歌山局 池之端隆史)
【2023年8月30日放送】
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