骨折の原因にもなる転倒 高齢者を守る最新技術が続々と

高齢者にとって転倒は骨折などにつながりやすく、介護が必要になったり寝たきりの原因にもなったりすると言われています。転倒から高齢者を守る最新技術とは?

VRで筋トレ 短時間で効果高まる?

松山市にある「富永ペインクリニック」。医師とIT企業などが共同で、VR(仮想現実)を活用した独自のトレーニングを開発しました。

ゴーグルをつけてトレーニングに励む岡本周造さん(64)。1キロの軽いダンベルを持ってスクワットしています。しかし、ゴーグルを通して見えているのは…。

1キロのダンベルを持ってスクワットしているが…
5キロのダンベル!

ゴーグルを通して見えているのは5キロの重いダンベルです。脳に、重い物を持っていると“誤解”させ、トレーニング効果を高める仕掛けだといいます。

岡本さん
「バーチャルのダンベルは大きいんで、重たく感じる」

また宇野綾子さん(82)は、筋力の衰えから何かにつかまらないと歩けなかったといいますが、トレーニングを続けて半年後、自力で歩けるまでになりました。

トレーニングでは、VRを使って週に1回10分程度の運動を行い、2か月後の握力をはかりました。握力は全身の筋力をはかる指標となるそうですが、2人とも上昇。ほかの体験者でも上昇がみられました。

これは、VRを使わないで週に1回、60分間運動した場合と同じ効果が得られているといいます。

このトレーニングプログラムは、1月に特許を取得。今後は、全国に広めていきたいといいます。

クリニック 富永喜代院長
「効果を得るために脳をだます、誤認させれば、フィットネスの負荷を重たいものを持たずに安心してできる。下半身を鍛えてもらって、転倒予防、こういうものに役立てていただきたい」

転んでも衝撃を吸収してくれる床材を開発

転倒してしまった場合に備え、床材の開発も進んでいます。

浜松市にある企業「マジックシールズ」が開発した床材は、衝撃を吸収する特殊な素材を使用しています。自動車部品などに使うゴム状の素材で、中は空洞になっています。植木鉢を落としても割れません。

車いすでも問題なく走行できる一方、転んで強くぶつかると、中の空洞が潰れて衝撃を吸収してくれます。

万一、転んでも…
空洞が潰れて衝撃を吸収

販売を始めて3年ほどで、全国400以上の施設に導入が進み、今後は、一般家庭への普及を進めたいといいます。

床材を開発した企業 下村明司社長
「転んでも骨折しないようにというソリューション、対策にたどりついた。皆さんが安全に心配なく歩けるようにしたい」

床材は、下村社長がもともとオートバイメーカーで長年衝突実験に携わっていた経験から開発したそうです。会社では今後、スポーツ施設などにも展開したいと考えています。

【2023年5月1日放送、初回放送3月20日】

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