夏休みシーズン ホテル・旅館の人材確保策は?

夏休みシーズンが始まり旅行業界は書き入れ時です。ただ民間の信用調査会社によると、旅館やホテルといった宿泊業では75.5%が「正社員が不足している」と答え、その比率が全業種の中でトップとなっています。

また「非正規社員が不足している」と答えた比率も、旅館やホテルは78.0%で、全業種の中で2位と非常に高く、人手不足が課題になっています。

各地の旅館やホテルは、人材を確保するために知恵を絞っています。

外国人人材 積極採用の動き

石川県七尾市にある老舗旅館「加賀屋」は全国的な人気を誇ります。インバウンド需要も取り込んで連日盛況ですが、人手不足が課題となっていました。

そこで期待をかけたのが「特定技能」の在留資格を持つ外国人の人材です。2022年11月にバングラデシュ出身のカン・ラセルさんを採用しました。

老舗旅館で働くカン・ラセルさん

七尾市の旅館 カン・ラセルさん
「お客様が自分の顔を見て、『あなたどこから来ました?』『結構頑張ってます』『日本語うまいです』。それを聞いたら自分の気持ちがうれしくなる」

「特定技能」の在留資格で担える業務が拡大

これまで宿泊業界では「技術・人文知識・国際業務」という資格を中心とした外国人が活躍してきました。この場合任せられるのは、フロントでの通訳など特定の業務に限られていました。

一方、4年前に始まった「特定技能」の資格では、通訳に限らず、フロント業務や接客、企画・広報、レストランサービスなど、日本人により近い幅広い業務を担うことができます。

 

臨機応変な接客が求められる宿泊業界では、これまで、教育の難しさなどへの懸念から外国人の採用がそれほど進んでいませんでした。しかし、この旅館では貴重な労働力として期待をかけています。

七尾市の旅館 人事課 奥田健裕 課長
「(外国人のスタッフがいると)インバウンドのお客様にとっても安心感につながる。一緒に働く仲間として積極的に採用していきたい」

新入社員の定着率アップなるか 温泉全体で合同研修

兵庫県豊岡市の城崎温泉では、地域全体で人材を確保しようと取り組んでいます。

ここでは少子化と人口減少で地元出身者の採用が難しく、全国から働き手を募集してきました。しかし小規模で家族経営の旅館では、採用しても1人か2人。仕事や生活の悩みを相談する相手がおらず、辞めてしまうケースも多いといいます。

そこで23年4月に初めて行われたのが、宿泊施設合同の新入社員研修です。7つの施設から25人が集まり、2泊3日で行われました。

講師は「お互いを知って出会いの価値を高めて」と激励

ビジネスマナーを身につけるなど研修自体の効果はもちろんですが、新人どうしが勤め先の枠を超えて絆を深める機会になることも期待しています。

新人どうし、会話が弾む

研修に参加した新入社員の1人
「城崎に1人で来たので不安とかあったけど、こうやって会を開いていただいて新しい友だちもできて、すごく楽しく過ごしている」

城崎温泉旅館経営研究会 椿野泰宏 会長
「(新人どうし)苦しいのも同じだろうし楽しいのも同じだろうから、仲良くなっていただけたら、少しでも定着率が上がってくれるのでは」

新入社員たちは、研修のあともたびたび飲み会を開くなどして交流しているそうです。

食事処など「施設の共有」策も

宿泊業界の人手不足対策としては、こうした取り組みのほか「施設の共有」という対策もあるかもしれません。例えば、小規模な旅館などが、温泉や風呂などはそれぞれ特徴を競い合い、食事処を一か所で共有するといったやり方です。

貴重な人材をどう採用し、長く働き続けてもらうか。宿泊業にとって今後も課題となりそうです。
(NHK World News部 阪口実香歩、神戸局 田口めぐみ)
【2023年7月28日放送】
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