“無料体験”でニーズをつかめ

化粧品やグルメを無料体験できる専門店が今、人気です。街ににぎわいが戻る中、消費者は最新の商品をお試しできる場として、企業はリアルな声を集めてマーケティングにつなげる場として、注目しています。

“無料お試し店”で探る Z世代の化粧品ニーズ

若者に人気の街、東京・原宿に2022年11月、化粧品の“お試し専門店”がオープンしました。いわゆる「Z世代」を中心に、連日多くの客が訪れています。

この店では、韓国や中国、台湾のブランドなど約30社の商品を、無料で好きなだけ試すことができます。

女性客の一人は「日本にふだん売っていない中国コスメとかがいっぱいそろっていて、実際に試せるのはいいなと思った」と話します。

化粧品の販売会社は、店に場所代を払って商品を置き、消費者のリアルな声を集めています来店客に、使った感想をSNSに投稿したり、アンケートに回答してもらったりするようお願いしています。その反応から、商品のどこに魅力を感じ、どうすれば買ってくれるかを探ろうというのです。

使った感想をSNSに投稿

化粧品を輸入販売する会社「D-Neeコスメティック」 中谷大 社長
「台湾で売れている色合いと、日本で輸入している色合いはちょっと異なるので、どういう品ぞろえがいちばんいいのかというところに非常に役立っている」

無料お試し店を運営する会社「トレンドキャスケット」 二階堂京介CEO
「SNS関連だったりリアルな声だったり、メーカーのマーケティングが開発に生かされるところまで発展していくと、われわれとしても意義があるのではないか」

“試食専門店”での声から新商品を開発

無料体験で捉えたニーズを商品開発につなげたケースもあります。東京・目黒区に23年2月にオープンした試食の専門店では、全国の食品メーカーの約100種類の商品を無料で味わえます

男性客は「味が確かめられるのですごくいい」、女性客は「堂々と試食できるのがありがたい」と話していました。

例えば、福岡県の食品メーカーが22年に販売を始めた煮物だしは、売れ行きが伸びず、この店で反応を探りました。

すると、試食した客から「関東の人には甘すぎる」「少ない量が欲しい」といった意見が寄せられました。味の好みに地域差があることや、単身世帯向けの商品にニーズがあることが分かったのです。

こうした声を受けてメーカーは新商品を開発し、23年7月から販売を始めました。

新商品を開発

福岡県の食品メーカー「ウェルテクス」代表取締役 﨑村峰徳さん
「メーカーが直接、大手でないとできないところ(マーケティング)を担ってもらえる、非常にありがたい店」

試食専門店を運営する会社「Liva」代表取締役 中村圭吾さん
「食品・飲料メーカーの多くの企業がマーケティング・PRに課題を抱えていると感じた。マーケティングにおける“新しい当たり前”というものがつくれると思う」

“ポストコロナ”の市場開拓手段に?

これら2つの店舗はいずれも、通常の接客ができるようになる“ポストコロナ”を見据えてオープンしました。客との実際のやりとりや表情などから得られる情報量は、オンラインの調査などと比べて多いということで、新たな市場を開拓する手段の一つとして有効だと見られます。
【2023年7月24日放送】
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