人口が世界一になったとされるインドでは、糖尿病患者の数が約7400万人に上るとされ、生活習慣病をいかに予防するかが大きな社会課題となっています。“生活習慣病大国”の予防医療のニーズを取り込もうと、日本の企業が進出に力を入れています。
精密化学メーカー 健診センターをオープン
インドの首都・ニューデリー近郊のグルガオンに2023年、健診センターがオープンしました。日本の精密化学メーカー「富士フイルム」が設立し、ほかの2つの施設と合わせた利用者は延べ1万人を超えました。
ここでは、最新の機器を使ったがんのチェックや、X線での体脂肪の測定などが行われ、生活習慣病の兆候をつかみます。
データはリアルタイムでAIを用いて分析され、2時間ほどで診断結果が専門医からフィードバックされます。
取材した日に健康診断を受けた40代の男性は「年に1回はここで健康診断を受けたい」と話していました。
日本の精密化学メーカー 守田正治さん
「(利用者は)インドの中・上流の方が多い。かなり口コミで広がっているのを感じる」
このメーカーは、インドの地元企業に福利厚生として利用してもらおうと、営業に力を入れています。利用料は1人当たり約3万円で、導入する企業が相次いでいるといいます。
インドの企業の担当者
「従業員には病気にならずに、長年、健康で楽しく一緒に働いてほしい。このサービスを従業員に推奨したい」
生活習慣病の背景に「食文化」
インドでは生活習慣病になる人が多いと言われていて、その背景には食文化があります。多くの人に親しまれている紅茶「チャイ」には砂糖が大量に入っていたり、多くの油を使った料理を食べたりします。
医療機器メーカーは遠隔診療サービス提供へ
病気になってから通院する傾向のあるインドの人たちに、予防への意識を高めてもらおうと、ニーズを掘り起こそうとしている日本企業もあります。
医療機器メーカー「オムロン ヘルスケア」は24年度から、インドで遠隔診療サービスを開始する予定です。メーカーは、サービスを導入した病院を通じ、高血圧などの兆候のある患者に自社製の機器を貸し出します。すると医師が、患者から届く血圧や心電図のデータをもとに、食習慣や運動など生活習慣の改善を促すというものです。
このメーカーは毎週、インド各地の薬局などで無料の血圧測定会を行っています。健康への関心を高め、サービスの利用につなげようとしています。
日本の医療機器メーカー 山本克行マネージャー
「間違いなく(予防医療への)ニーズは増えていく。デバイスを売るだけではなくて、新たな付加価値をつけて使ってもらうことが重要」
インドでは若くして生活習慣病を発症する人が多いというデータもあるそうです。病気による経済損失が2030年までの約20年間で3兆ドル以上に上るという研究結果も出ています(世界経済フォーラムなどの研究)。経済成長を支えるうえでも、予防医療へのニーズがますます高まっていくかもしれません。
(ニューデリー支局 山本健人)
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