医療・介護 中国で事業展開の動き広がる

中国は新型コロナウイルスの影響で打撃を受けた経済の立て直しに向け、外資系企業の投資などを呼び込もうとしています。今後ニーズが拡大すると見られる医療や介護の分野で、日本企業が現地の企業と協力しながら事業を展開する動きが出てきています。

日本の肺がん治療法研究 中国マネーで継続

中国内陸部の四川省成都で今、神戸市の公益財団法人と現地・成都のスタートアップ企業が、医療分野での共同開発を目指すプロジェクトが進んでいます。肺がんの新たな治療法の研究などに共同で取り組みます。

中国側が提供するのは豊富な資金です。6月には、日本円で1000億円以上の運用実績がある投資会社が支援することになりました。

中国人研究者の指導にあたっているのは日本の研究者です。後継者や資金の不足などで研究が途絶えるおそれがありましたが、中国で継続できるようになりました。

日本の研究者
「今回お誘いがあったので(中国に)来た。本当にありがたいし、どんどん進んでいただきたい」

成都のスタートアップ企業 劉苗苗 会長
「(日本は)資金面の支援がとても少ない。中国は新薬とイノベーションの導入を必要としている。より早く(医薬品を)市場に投入することで、より早く患者の苦痛を軽減したい」

日本の認知症介護ビジネスを中国へ

高齢化が進む日本の知見を生かし、中国で成果を出し始めた事業もあります。さいたま市に本社がある介護事業者は2022年までの5年間に、天津市など中国各地で6つの介護施設をオープンさせました。合弁相手の中国企業と連携して、需要が高まっている認知症の介護サービスを提供しています。

施設の利用料は最高で月額約32万円と割高ですが、サービスと質の良さから満足度が高いといいます。

天津市の介護施設

さいたま市に本社がある介護事業者 王思薇 取締役
「中国で認知症介護をきちんとやれる企業は、まだまだそんなにたくさんあるわけではなく、ただしマーケットとしてはすでに大きくなっている」

中国では1500万人を上回る認知症の人がいるとされていて、今後さらに増えていくと予想されています。

日本で培われたきめ細かな介護サービスの研修を行うことで、より多くの中国人スタッフのスキルアップにつなげようとしています。

研修を受けるスタッフ

合弁相手の中国企業 于澤 総経理
「日本の高齢化は中国より何年も進んでいるので、多くの経験を積んでいる。(合弁を通じて)回り道が減り、介護ビジネスがより早くよくなっていくだろう」

改正「反スパイ法」施行 事業環境は不透明

重病の治療法の開発や高齢者の介護などは、日本も中国も共通して抱える課題です。また中国では少子高齢化が日本と同様に迫っています。日本企業が積み重ねてきたノウハウと中国側の豊富な資金を組み合わせて、ビジネスの拡大につなげることのできる分野がほかにもあるかもしれません。

ただ中国では改正「反スパイ法」が施行されるなどビジネス面への影響が読み切れないところもあり、事業環境の不透明さが指摘されています。中国政府が外資系企業を呼び込むには、こうした懸念を払しょくすることが必要になります。
(中国総局 伊賀亮人)
【2023年7月6日放送】
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