世界が注目! ジャパニーズウイスキー

日本のウイスキーの輸出額はこの10年で約14倍に増加し、日本酒を追い抜くまでになっています。海外で権威のある賞を受賞したのをきっかけに世界で注目されるようになりました。人気を背景に、「ジャパニーズウイスキー」への新規参入を目指す動きが、国内外で相次いでいます。

日本酒の蔵元 コロナ禍を機に新規参入

小学校の体育館をリノベーションしたウイスキーの蒸留所

岐阜県高山市に3月、新たなウイスキー蒸留所が誕生しました。仕掛けたのは、200年以上続く日本酒の蔵元の社長、有巣弘城さんです。

有巣さんの酒造会社はこれまで主に、地元・高山を訪れる観光客向けに日本酒を販売してきましたが、新型コロナの影響で売り上げが半減しました。そこで目を付けたのが、海外で人気の「ジャパニーズウイスキー」です。

有巣弘城社長

酒造会社 有巣弘城 社長
「海外へお酒を輸出するということは、会社の経営を安定させる」

日本酒の蔵元が家業の有巣さん(中央)

ウイスキーをつくるうえで役立ったのが、日本酒づくりで培ってきたノウハウです。有巣さんは温度や成分によってどのような変化が生じるかを調べ、理想のウイスキーに近づけようとしています。

温度管理など日本酒のノウハウをウイスキーづくりに生かす

ただ熟成には時間がかかるため、出荷できるのは早くとも3年後になる見込みです。

有巣社長
「“日本酒屋”がやっているウイスキー。相乗効果で世界の人に愛してもらえるようになっていけばうれしい」

中国からも熱視線

ウイスキービジネスの可能性に目を付けているのは日本人だけではありません。中国から来日し全国の蒸留所を巡っている、ウイスキー販売会社の代表、鄭冲(てい・しょう)さんは、高山市の有巣さんのウイスキーが値上がりすることを見越して、たる2つ分の権利を500万円で手に入れました。

将来はみずから販売会社を立ち上げ、自社ボトルのウイスキーを売り出す計画です。

鄭さんが権利を買ったウイスキーだる
鄭冲さん

ウイスキー販売会社の代表 鄭冲さん
「有巣さんはすごくウイスキーづくりに関して熱心で、間違いなくおいしくなると思う」

中国人の富裕層の間では、ウイスキーの蒸留所に出資し、経営に参画しようという動きも起きています。

鄭さんの顧客の1人で貿易会社を営む男性は、これまでウイスキーのボトルを購入してきましたがそれでは飽き足らなくなったといい、「今後チャンスがあれば日本のウイスキー蒸留所と巡り合い、投資したり、深く交流したりしたい」と話します。

ジャパニーズウイスキーに関心を高めている貿易会社社長の男性

鄭さん
「ジャパニーズウイスキーのマーケットは拡大できる。すごい時代になる、これからは」

ジャパニーズウイスキー市場の盛り上がりを受け、日本のウイスキーメーカーには大規模な設備投資をして生産を増やそうという動きもあります。ただ熟成に時間がかかるため、すぐには出荷量を増やせないという悩みもあるそうです。
(静岡局 酒井夏洋)
【2023年7月12日放送】
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