“ピンクマネー(Pink Money)” アメリカ経済に旋風?

ピンクマネー(Pink Money)」とは、欧米で「LGBTQなど性的マイノリティーのコミュニティーの購買力」を指す言葉です。ピンクは性的マイノリティーの人たちのシンボルカラーとされています。

こうしたお金の動きが経済に与えるインパクトが今、注目されています。

注目され始めた「ピンクマネー市場」

アメリカ・ロサンゼルスの中心部で開かれたパレード。LGBTQの人たちが、自分たちの権利を守ってほしいと訴えました。

参加者は「初めて参加した。とてもワクワクしている」、「すばらしい、今だけでもみんながありのままの自分になれる」などと話していました。

こうした性的マイノリティーのコミュニティーのニーズに、企業が着目する動きが今、活発になっています。

旅行会社や金融サービスも

カリフォルニア州には、LGBTQの人たちを対象にしたツアーを提供する会社があります。

利用者の1人、ニック・ディラミオさんは、より安心して旅行を楽しめるよう、このサービスを使うようになりました。

ツアーを提供する会社を訪ねたニック・ディラミオさん(左)

ニック・ディラミオさん
「旅行で周りの人から『彼女はどこ?妻はどこ?』と聞かれると気まずい感じになる。少し高くても、すばらしい体験のためにちょっと多くお金を出すのは構わない。快適で、大切に扱われていると感じられるサービスにお金をかけたい」

ニューヨークには、LGBTQの人たちに特化した銀行や保険などの金融サービスの提供を目指すスタートアップ企業もあります。

性的マイノリティーの人たちは、同性のカップルであることを理由にローンや保険の契約がスムーズに進まないケースなどもあるためだといいます。

金融サービスのカードを手にするマイルズ・マイヤーズCEO

LGBTQ向け金融サービス会社 マイルズ・マイヤーズCEO
「ひどい扱いを受けたという相談の電話やメールを頻繁に受け取る。必要な金融サービスを受けられないと、生活に多大な影響がある」

反発受け、不買運動も

一方、企業の中には、思わぬ反発を招いたケースも出ています。アメリカの大手ビール会社は性的マイノリティーの人たちへの理解を促そうと、シンボルの虹を描いた缶ビールを販売しました。

さらにことし4月、トランスジェンダーの俳優に、本人の顔のイラストが入った缶ビールを贈りました。

すると、伝統的な性の道徳観を重んじる保守派から激しい抗議を受けました。SNS上で「ボイコットする」「二度と飲まない」などといったコメントが相次ぎました。

このビール会社は「人々を分断する議論に参加しようという意図は全くなかった」などと声明を出しましたが、不買運動の広がりで、アメリカでの売り上げトップの座を明け渡す事態となりました。

問われる企業のスタンス

専門家は、性的マイノリティーに対する社会の考え方が多様化する中、企業もそのスタンスを常に問われるようになっていると指摘しています。

テキサス大学オースティン校 エリカ・シスゼック 准教授
「ジェンダーや性の概念はより流動化していて、それがより一般的になっている。ブランドや組織は、ジェンダーや性をめぐる世論の変化を認識することが重要だ」

アメリカでは、いわゆるZ世代の若者は、ほかの年代と比較してLGBTQのコミュニティーに属すると考える割合が多く、この世代が本格的に働きに出て、お金を稼ぐようになると、ピンクマネー市場がさらに活性化するとみられています。

(ロサンゼルス支局 山田奈々)
【2023年6月22日放送】

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