EVバッテリーの性能 未来予測をする新技術 

EV(電気自動車)のバッテリーの性能は時間とともに低下していきますが、課題の1つとして指摘されているのが、どの程度低下するか正確に把握するのが難しいことです。

この課題の解決に向けて新たな技術が生まれています。

数年後の性能把握が難しい理由は?

カーリース会社「住友三井オートサービス」が所有する、あるEVの中古車は、5年間貸し出されて2万7000キロ走行しました。現在は1回の充電で250キロ走行できますが、バッテリーの劣化によって、数年後にどの程度走れるか予測するのは難しいといいます。

バッテリーの劣化の度合いは、走行距離だけでなく、気温や坂道の多さ、渋滞の状況など、さまざまな要因で変わるからです。

このためリース会社の担当者、奥村進吾さんは「実際のバッテリーの状態が分からず、中古になると新たな客に貸し出しにくい」と言います。

「データ」で性能予測を可能に

こうした状況を解消しようと、大手IT企業「DeNA」は新たな技術を開発しました。全国およそ900か所の季節ごとの気温データや、地域ごとの細かな道路データを独自の技術で数値化し、さらにバッテリーも素材から詳しく分析します。これらの膨大なデータを組み合わせることで、性能の“未来予測”をしようというのです。

例えば、2万7000キロ走行したカーリース会社所有の中古車の場合、東京都内で1日30キロ程度走行すると想定すれば、5年後には1回の充電で146キロ~198キロ走行できると判断されました。

カーリース会社 奥村さん
「(性能の予測は)すごく重要なお客様に提供できる情報なので、これによって2次リースが加速したり、お客様の安心につながっていったりするのでは」

ガソリン車から買い換えたらどのくらい走る?

この予測技術を応用すると、ガソリン車からEVに買い換えた場合、今の車の使い方を続けると、1回の充電でどのくらい走行できるかシミュレーションすることができます。

まず今のガソリン車の車種や年式、1日何キロを運転するといった使用条件や地域を入力します。すると、車を使う場所や使い方によって異なる走行距離を、EVの車種ごとに予測してくれます。

例えば、ある車では、新車時に1回の充電で走行できる距離が最長481キロと予測。自動車メーカーが公表する性能は500キロ以上ですが、運転のしかたによって性能に影響が出ると示されました。

この車は5年後には1回の充電で最長460キロ走ると予測されました。そこまで劣化しないという予測になっています。

性能を予測する技術を開発した大手IT企業 二見徹 フェロー
「『乗ったら何キロ走れるの』。これはずっと分からなかった。これはデータで解決するものであって、乗る前に分からなければ意味がない。電気自動車になった時、長く使える一つの根拠になるのではないか」

このIT企業は4月から、EVを扱うリース会社4社にこのシステムを試験的に導入していて、企業や役所がガソリン車からEVに乗り換える際の検討材料に使われる予定だということです。新技術がEV普及を後押しするのか、注目されます。
【2023年5月8日放送】
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