「空き家税」京都で導入へ 空き家対策は進むのか

空き家の戸数が全国で800万戸を超え、深刻な課題になっています。京都市では全国で初めて、所有者に課される「空き家税」が3年後の2026年度にも導入される見通しとなりました。新たな税で対策は進むのでしょうか。

家屋評価額の0.7%を新たに課税

観光地として人気の京都ですが、空き家問題が深刻で市内に10万戸を超える空き家があります。

市内に空き家を持つ森谷均さんは、空き家税が導入されるのを前に、この家をどうするか悩んでいます。

森谷さんが所有する築60年ほどの空き家
内部を案内する森谷さん。台所は「だいぶ片づけたが、ごちゃごちゃしている」

森谷さんは妻の父親が住んでいた築60年ほどの住宅を受け継ぎました。現在は、家を維持するだけで電気代や水道代、固定資産税などを合わせて年間6万円の費用がかかります。

それに加えて空き家税が新たな負担になります。空き家税は、利用されていない住宅や別荘などの所有者に対し、家屋の評価額の0.7%を課税するなどとしています。森谷さんの場合は年間約2万円が新たな負担になります。

空き家を所有する 森谷均さん
「誰もたぶん空き家にしておきたいと思っていない。『何とかしなきゃいけない』というジレンマに陥る」

空き家税導入の背景に“住宅不足”で子育て世代流出?

空き家税導入の背景にあるのが、住宅不足による人口の流出です。京都市内中心部ではマンションの価格が高騰し、子育て世代が住まいを見つけられずに市街に流出して課題となっています。

マンション価格が高騰する京都市中心部

そこで市が目指しているのが、空き家税の負担を避けようと、所有者が賃貸や売却などを進めることです。そこに子育て世帯を呼び込もうというのです。

京都市税制課 担当課長 川戸哲郎さん
「この税をきっかけにして、空き家をどうしようか考えてもらうきっかけになれば。流通・利活用が進めば、子育てされる方にも使ってもらえる」

賃貸・売却…「考える一つのきっかけに」

空き家を所有する森谷さんは、空き家の活用を進める会社「空き家バンク京都」に相談することにしました。

相談する森谷さん

森谷さんは「活用方法があるのかとか、売ったほうがいいんじゃないかとか、いろんなことを考える」と相談。それに対し、この会社の代表の鈴木一輝さんは「家具・家財がまだ残っている状態なので、いったん撤去してもらってから貸し出しをする、または多少リフォームを加えて貸し出しをする」などとアドバイスしました。

森谷さんは今後、費用をかけて住居や店舗として貸し出すかどうか、検討していくといいます。

森谷さん
「(空き家税が)一つのきっかけになる。いろんなアイデアをもらったので、ちょっと考える時間をとりたい」

家財や内装リフォームをどうするかなど、すぐに対策を取るのが難しい人もいるとみられ、所有者の負担が増えるだけにならないことが求められます。

空き家税は京都市としてもある種“苦肉の策”で、制度の導入で見込まれる9億円程度の税収は空き家対策に重点的にあてるということです。大事なのは実際に空き家の活用をどう進めるかで、市としても所有者の具体的な相談に乗っていきたいとしています。
(京都局 海老塚恵)
【2023年4月12日放送】
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