消火・人命救助 災害現場で期待されるロボット

阪神・淡路大震災から28年。最新のロボット技術を活用し、大規模災害の現場で人命を救おうという取り組みが広がっています。消防車の入れない細い道でも消火活動ができるロボットや、倒壊した家屋などから人を救助する2足歩行のロボットの開発が進められています。

消防車が入れない場所で消火 元消防士がロボット開発

遠隔操作で放水する消火ロボット

埼玉県寄居町のベンチャー企業「アームレスキュー」が開発した「消火ロボット」は、火災の発生時に消防用のポンプ車などとつないで放水ができます。

毎分500リットルの放水を遠隔操作で行うことができて、消防士たちの安全も考慮されています。

阪神・淡路大震災では住宅が密集する地域で火災が相次ぎ、7000棟余りが全焼する大きな被害になりました。

この消火ロボットは幅55センチというコンパクトなサイズがいちばんの特徴です。消防車が通れない住宅密集地の狭い道でも、消火活動ができるようにしています。

幅55センチのコンパクトサイズ

ほかにも、人が入れない場所の被害を早期に確認するため、カメラを取り付けたロボットも開発しました。

ロボットの開発に携わったのは、40年以上消防士として働いてきた田中章社長(63)です。人の手が届きにくい火災の現場でも命を救いたいと取り組み始めました。

元消防士の田中章社長

寄居町と災害時に協力する協定を結び、実際の災害現場でカメラを取り付けたロボットを活用しようという動きも出てきています。

ベンチャー企業 社長 田中章さん
「これから来るであろう大きな災害・地震に向けて、もっともっと消防活動が安全に確実に迅速にできるように望んでいる」

2次災害リスクある現場で救助 人型ロボットの開発進む

阪神・淡路大震災では多くの建物が倒壊し、救助活動が困難を極めました。こうした課題に対応するためロボットを活用しようという取り組みもあります。

大手機械メーカー「川崎重工業」が開発中のロボットは、倒壊した家屋などから人を救い出すことを目指しています。いまの段階では60キロの重さまで持ち上げられるということです。

ガス漏れや天井の崩落など、2次災害のリスクがある現場でも、いち早く救助活動を始めようというねらいです。

ロボットの顔の部分にはカメラがついていて、操縦者が遠隔で救助した人の状態を確認することができます。

ロボットの顔についているカメラ

足場が悪い場所でも安定して動けるかなど課題もありますが、将来的には1人で複数台のロボットを動かすことも想定していて、人手が限られる災害時に役立てたいといいます。

大手機械メーカー ロボットディビジョン長 髙木登さん
「災害が起きた直後は、現場に人が入りにくい。ヒューマノイド(人型)ロボットだと入っていって、人命救助あるいは中の点検ができる。活躍してもらえるのではないか」

このロボットは、今は人が操作していますが、将来はAIを搭載して自力で人を救助できるようにする構想もあるといいます。

自然災害の多い日本ならではの研究が進むことが期待されます。
【2023年1月17日放送】
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