海外で人気高まる徳島のさつまいも「なると金時」好まれる理由は?

徳島で生産されている、さつまいも「なると金時」が今アジアの各地で人気です。日本からの輸出量は、この7年で6倍近くに増えています。そこにはピンチをチャンスに変えた逆転劇がありました。

控えめな甘さがアジアで人気

香港の中心部のスーパーマーケット。日本から輸入されたさつまいもの中で人気なのが「なると金時」です。

買い物客の一人は、なると金時を何袋も買い物かごに入れていました。「前に2袋買ったら、家族から『おいしいからもっと買ってきて』と言われた。買い足さずに済むように多めに買う」と話します。

香港のスーパーの店員
「なると金時の味は、ほかのさつまいもより香港の人の好みに合う。お年寄りから子どもまで幅広い世代に人気」

人気の理由は、控えめな甘さで料理やスイーツのアレンジがしやすいことです。

最も好まれるのはシンプルなふかしいも。ショウガと一緒に炊いて、黒糖で味付けをした「糖水(とうすい)」というデザートにもよく使われるそうです。

デザートの「糖水」。さつまいもが使われている

人気はここ数年、香港だけでなく、台湾やシンガポール、マレーシアといったアジア各地に広がっています。

国内の甘いさつまいもブームでピンチに

なると金時の輸出を進めてきた徳島市の農家の6代目、藤原俊茂さんは、若手農家5人で農業法人「農家ソムリエーず」を立ち上げ、生産に取り組んできました。

藤原俊茂さん(中央)

藤原さんが輸出に乗り出したのは8年前です。当時、日本国内では、糖度が高く甘い品種のさつまいもがブームになり、甘さ控えめななると金時の売れ行きは低迷していました。

農業法人 代表取締役 藤原俊茂さん
「その当時のブームの波を考えると、ものすごいあおりを受けた。ある種どん底を見た。このまま農業を続けていけるのか、さつまいもを作り続けていけるのか」

貯蔵技術を工夫 海外へ販路拡大

藤原さんが新たな販路拡大のために目を付けたのがアジアへの輸出でした。

しかし、さらなる難問がありました。さつまいもは寒さに弱く、輸出用の冷却コンテナの中では、表面の傷から入った病原菌によって腐敗の進行が速くなることが分かりました。輸出した7割が廃棄処分になったこともあったそうです。

カビが生えてしまったさつまいも

そこで「キュアリング」という貯蔵のための技術を取り入れました。

収穫後に高温・多湿の環境に数日間置くと、さつまいもの表面にコルク質の層が生まれ、劣化の原因となる菌の侵入を防ぎます。

藤原さんは県の研究機関と協力して温度と時間の組み合わせを何度も試し、「42度で1日半」という最適な条件を発見しました。これにより廃棄率を1割以下に抑えることができました。

藤原さん
「国内海外問わず(なると)金時大好きな方たくさんいるので、その方々に自分たちが思いを込めて作ったものを届けていく」

国によっては検疫が厳しく輸出が難しいケースもあるということですが、藤原さんはアジア以外にも輸出し販路を広げていきたいと話していました。
(徳島局 入澤奈都)
【2023年1月16日放送】
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