ラム酒づくりでふるさとを元気に ~千葉・南房総~

ラム酒が何からつくられるか知っていますか?正解はサトウキビ。千葉県南房総市では、サトウキビを栽培してラム酒をつくり地域の特産品にしようという取り組みが行われています。

ビジネスとしての成功と同時に、耕作放棄地など地域課題の解決も目指すこの取り組み。現地を取材しました。

(おはよう日本 キャスター 副島萌生)

台風被害から立ち上がったサトウキビ 蒸留に着手

南房総市でサトウキビをつくる青木大成さん

訪ねたのは、南房総市でサトウキビを育てている青木大成さん(48)です。地元で生まれ育った青木さんは、高齢化などで農業をやめてしまった耕作放棄地を何とかできないかと、サトウキビづくりを始めました。

「ちょっとかじってみます?」。青木さんに促されサトウキビにかじりつくと、とても甘い!南房総市はサトウキビの産地の中では年間の寒暖差が比較的大きいため、糖度が上がるそうです。

甘さに驚く

飲食店を営む青木さんがラム酒を特産品にできないかとサトウキビづくりを始めたのは、3年前の2019年でした。しかしその年の9月、台風15号が千葉県を直撃。畑のサトウキビも倒れてしまいました。

ところが台風から2か月ほどたつと、倒れたサトウキビの葉が上に向かって伸び始めたのです。

倒れても上へ伸びるサトウキビ

青木大成さん
「上に向かって伸びていて、それを見て元気づけられた部分があったので、思い切ってラムづくりを事業化しようと」

甘い香りの秘密はつくり方にあり

青木さんはその後、台風で耕作放棄地となった土地にも栽培を拡大しました。畑の近くに蒸留所も整備して、2022年にラム酒づくりに着手しました。

取材した日は、特別に試飲もさせてもらいました。アルコール度数は45度ぐらい。度数の高さに大丈夫かな?と口に含むと、確かに強い!そして甘くふわっと香りが立ち上りました。

青木さんは「香りが甘いのでついいっちゃうけど、飲むと結構アルコールが強いと思う」と話します。

香りの秘密はつくり方にあります。ラム酒の多くは砂糖を作ったあとの副産物からつくりますが、青木さんはサトウキビの甘い搾り汁をそのまま濃縮してつくっています。

ラム酒づくりから地域の課題解決へ

国産ラム酒の蒸留所は関東では珍しいということで、専門家は新たな観光にもつながるのではないかと話しています。

日本ラム協会会長 バーテンダー 海老沢忍さん
「首都圏からすごく近いということで、ラム酒を召し上がって気になった方は『そんな近くでラムづくりしているんだ』というのに興味を示すのではないか」

青木さんはさらなる地域の課題解決も目指しています。地元で放置された山林の木を、熟成用のたるに使うことで山の保全につなげたいと考えています。

放置された山林は倒木被害につながりかねない

青木さん
「山と畑とを使いながら地域全体を使ってラム酒をつくりたい。世界の酒場で『BOSO(房総)1杯!』みたいな感じで注文してもらえたらいいな、というのが僕らの将来的な夢」

今回の取り組みは千葉県などが開いたビジネスコンテストでも最高賞を受賞し、すでに商談も始まっているということです。

地元でサトウキビを作って搾り汁の鮮度を大切にするために蒸留も近くで行う。さらに、熟成させる木も地元のものを使う。すべてを地元のものでまかなうのはたいへんなことだと思いますが、実現すればその地域の大きな武器になると感じました。
【2022年9月5日放送】

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