寝る会社が勝つ!?

勤務間インターバル制度」を知っていますか?勤務と勤務の間の時間をきちんと空け、働く人が自分の時間や十分な睡眠をとれるようにするものです。

ヨーロッパでは11時間以上のインターバルが義務化されています。一方、日本では導入している企業はまだ5%以下にとどまっています。

労働時間を減らすだけでなく、社員の睡眠確保に取り組む企業を取材しました。

閉店早めたすしチェーン 従業員に11時間以上休息を

首都圏を中心に93店舗を展開する、すしチェーン「銚子丸」は5月から、全店舗で閉店時間を夜10時から9時に1時間早めました。従業員に11時間以上休んでもらうためです。

入社17年目の笹川尭彦さんは「昔は正直言って気合いと根性。『睡眠時間さえ削ればいいでしょ』みたいな。昔と比べたら全然変わっている」と話します。

従業員は今では8時間前後の睡眠を確保できるようになり、リフレッシュして働くことができているといいます。

客の男性も「雰囲気はいいと思う。みんなすごく頑張っている」と話していました。

睡眠を確保するために会社が行ったのは、閉店を早めることだけではありません。

千葉市にある本部では3000人の従業員の勤務を毎日確認しています。予定のシフトより長く働いたケースについては、管理部の担当者が「実際の勤務が夜10時すぎになっていたが、当初の予定と変わったことがあったのか」などとすぐに店舗に確認。原因を探ります。

生産性向上へ 動画で修行も

会社では、勤務時間の中で修行できる仕組みも考えました。

2022年に入社した新人の加藤晏梨さんが勤務時間中に見ているのは、魚のさばき方の動画です。会社が調理や接客などのポイントをまとめた動画を作ったのです。

従業員は動画で予習をして、分からないところだけ先輩に聞きます。加藤さんは「難しいです。本当に」と話しながらも丁寧に魚をさばいていました。

会社では閉店を早めたことで働き方にメリハリができ、パフォーマンスが向上。労働時間1時間当たりの売り上げが10%増えました。

すしチェーン 石田満 社長
「生産性が向上した。早く帰れる、ゆっくり休めることは大事。本当にそう思う」

睡眠は「成長のカギ」「業績向上に直結」

100社以上に睡眠改善に特化した支援をしてきた東京のベンチャー企業「ニューロスペース」は、「従業員の睡眠こそが成長のカギ」と捉える企業が増えてきたと感じています。

この会社はウエアラブル端末を貸し出して、従業員の睡眠データを得ています。その結果、「特に働き盛りの年齢層が『起きるのがつらい』『疲れがとれない』『寝つけない』などの悩みで困っている」といいます。

得られたデータは個人が特定できない形で企業に提供し、年齢層や部署ごとの働き方を考える指標にしてもらっています。

ベンチャー企業 小林孝徳 社長
「睡眠時間を確保できる。そういう会社こそこれからどんどん成長していく、持続的に発展する、サステナブルな会社になっていくんじゃないか」

数々の企業で働き方改革を進めてきた「ワーク・ライフバランス」代表の小室淑恵さんは、「睡眠に着目する企業は離職率も低下している。睡眠は業績向上に直結する経営戦略だと企業に捉えてほしい」と話しています。こうした取り組みの広がりに期待したいと思います。
【2022年7月25日放送】

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