【取材の現場から】彼女が作る“ギョーザ”の中身は?
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その“ギョーザ”は、とても優しい味がしました。
それは、ルーマニアに避難するウクライナ人の女性たちが作ったものでした。
避難しているのは10代から40代の4人。首都ブカレスト郊外のアパートで暮らし、自分たちで手作りした“ギョーザ”をSNSで販売して、避難先での生活費に充てているといいます。
「『おいしくなりますように』と、心を込めて作るのが、おいしさの秘けつです」
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こう話すのは、ナタリヤ・ドミトリエワさん(22)。医師を目指して学ぶ大学生です。南部オデーサで学生生活を送っていたところ、ロシアによる軍事侵攻を受けて、親戚とともに避難してきました。
ナタリヤさんたちが“ギョーザ”を作るというので、その様子を取材させてもらいました。
この“ギョーザ”、実はウクライナでは一般的な料理で、ひき肉を丸く包んだものを「ペリメニ」、キノコやカッテージチーズなどを半円形に包んだものを「ワレニキ」と呼ぶのだそう。
小麦粉で作った薄い生地を、直径6センチほどの円形にくりぬき、真ん中に具材を載せて、指先で器用に包んでいきます。
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ウクライナの思い出話、最近見たニュースの話。料理中は4人のおしゃべりの時間。その間も、どんどんどんどん包んでいきます。
完成した「ペリメニ」や「ワレニキ」は、5分ほどゆでたら温かいうちにいただきます。サワークリームを付けるのが一般的ですが、マヨネーズとケチャップを混ぜたソースが、ナタリヤさんのお気に入り。
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心を込めて作ることに加えて、避難先での“ギョーザ”作りでは、ある思いを一緒に包んでいるそうです。
「美味しい具材と一緒に、『すべてがよくなりますように』という平和への願いと、愛情を包んでいるんです」
避難先でも、オンラインで医師になるための勉強を続けているナタリヤさん。別れ際に、私にこう声をかけてくれました。
「料理が上手なお医者さんになりたいから、次会うときは、お寿司の作り方を教えてくださいね。約束ですよ」
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シドニー支局
青木 緑
2010年入局。釧路放送局、新潟放送局などをへて2020年からシドニー支局。ルーマニアでは、ウクライナの人たちの避難生活が長期化する中、自立に向けた活動や、避難者みずからが行うボランティア活動などを取材。