【取材の現場から】戦争が変えた「少年の夢」

絵に描かれていたのは、動物、虹、そして戦車。

8歳の少年が描いた絵です。

粘土で作られた銃もありました。

「これが、アンドレイが見ている世界です。こういう作品を作るようになったのは、戦争が始まってからです」

少年の母親ダリヤさんは、アンドレイくんの絵や粘土を見つめながら話しました。

アンドレイくんが作った“粘土の銃”

ロシア軍による侵攻が始まる前、ウクライナ南部のオデーサで暮らしていたアンドレイくんの夢は、宇宙飛行士。テレビゲームと粘土細工が大好きな男の子でした。

戦火を逃れ、隣国モルドバの村に避難してきたアンドレイくん。

「ロシア軍が来たぞ」「僕らはウクライナ軍だ」

独り言を言って遊ぶようになったといいます。

取材に訪れた日。鶏が未舗装の通りを横切る、のどかな村の中で、アンドレイくんは、ほかの子どもたちと声を上げて遊んでいました。

家の中では、スマートフォンのゲームに熱中して母親に叱られ、不満そうな表情を見せるなど、“どこにでもいるような子どもたち”と同じに見えました。

アンドレイくんに、避難先のモルドバでの生活について聞くと、村の人たちがお菓子をくれたり、料理を作ってくれたするのがうれしいと話しました。友だちも7人できたといいます。

一方で、「オデーサに帰って、パパに会いたい」と、私の目をまっすぐ見つめて話しました。

話題を変えようと、将来の夢を聞くと、アンドレイくんは次のように答えました。

「特殊部隊!人間を守る仕事だよ。特殊部隊は、いい仕事だよ。ライフルも撃てるようになるよ」

  • シドニー支局

    青木 緑

    2010年入局。釧路放送局、新潟放送局などをへて2020年からシドニー支局。
    モルドバではロシア語が広く通じ、避難してくる人もロシア語を話すウクライナ南部の人たちが多い。学生時代に身につけたロシア語で避難者や受け入れる市民の声を取材。