【取材の現場から】4歳で亡くなった男の子

ウクライナから70キロほど離れた、ポーランドの駅。
その一角に設けられた臨時のボランティアセンターに、男の子の情報を呼びかけるポスターがありました。

「行方不明の男の子を探しています。4歳です。戦争の混乱の中、行方がわからなくなりました。連れ去られたのか、あるいは、国境をすでに越えているのかもしれません。生きて見つかることを願っています。よろしくお願いします」

母親に連絡すると、男の子のことを教えてくれました。
4歳の男の子の名前は、サーシャくんといいました。ロシアによる軍事侵攻が続く、3月10日、首都キーウ近郊から祖母と一緒に避難。

しかし、途中で祖母とサーシャくんが行方不明に。祖母は、その後、亡くなっているのが見つかりました。一方、サーシャくんの行方は、わからないままでした。

母親は、3週間以上、SNSでサーシャくんにつながる情報を求め続けていました。

「サーシャは、絶対に見つかると信じています」

母親は、こう話していました。

しかし、4月5日、母親はSNSに、次のように投稿しました。

「サーシャの遺体が見つかりました。信じてくれた人、探してくれた人、みなさんに感謝しています。おかげで、私は息子に会うことができました」

侵攻が始まってから死亡した市民は、少なくとも1842人。このうち、148人が子どもです。(国連人権高等弁務官事務所、4月10日の時点)

サーシャくんが、なぜ亡くなったのか。詳しい理由はわからないといいます。ただ、軍事侵攻がなければ、失われずに済んだ命でした。

  • 国際部

    鈴木 康太

    2011年入局。札幌局、社会部などを経て2021年から国際部。
    ポーランドを拠点に避難してくる人たちと支える人たちを取材。