審査対象の11人が
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2020年10月13日判決契約社員の退職金不支給は
不当?

どんな
裁判か

  • 駅の売店で働いていた元契約社員たちが正社員と同じ仕事をしていたのに退職金が支給されないのは不当だと訴えた裁判
  • 「不合理な格差にあたらない」と判断。ケースによって違法となる場合もあると指摘
  • 5人中1人が反対意見

東京メトロの子会社「メトロコマース」の契約社員たちは、駅の売店で正社員と同じ業務をしていたのに退職金などが支給されないのは違法だと訴えました。
2審の東京高裁は、退職金を支給しないのは不合理な格差で違法と判断し、正社員の退職金の4分の1の支払いを命じ、契約社員と会社の双方が上告していました。

最高裁第3小法廷は、「退職金は労務の対価の後払いや続けて勤務したことに対する功労の性質もある。正社員は複数の売店を統括し、サポートやトラブル処理などに従事することがあるが、契約社員は売店業務に専従し、一定の違いがあったことは否定できず、配置転換も命じられない」と指摘。その上で、退職金を支給しないことは不合理な格差に当たらないとする判断を示し、2審の判決を変更し、一部の手当てについての訴えは認めましたが、退職金についての訴えは退けました。

一方で、判決では退職金についても不合理な格差と認められる場合には、違法と判断することもありうるとし、ケースごとに検討すべきだとしました。
5人の裁判官のうち1人が「不合理だ」とする反対意見を述べています。

働き方関連法とガイドライン

この裁判と、同じ日に判決があった「ボーナス」に関する裁判は、いずれも2013年に施行された労働契約法20条に基づき起こされました。
当時の労働契約法20条では、有期雇用の労働者と正社員の間の待遇の違いは不合理なものであってはならないと定めています。
不合理かどうかの判断には、▼業務の内容や責任の程度、▼配置の変更の範囲、▼「その他の事情」を考慮することとされていました。
最高裁判決の年(2020年)の4月には、働き方改革の一環として法律が改正され、この条文は削除されましたが、「パートタイム・有期雇用労働法」に同じ趣旨の条文が盛り込まれました。厚生労働省は、この条文などをもとに「同一労働同一賃金」についてガイドラインを定め、2020年4月から大企業を対象に運用を始め、翌年からは中小企業にも適用されました。ガイドラインでは「ボーナス」について具体的な事例を示した上で、「会社の貢献に応じて支給されるものについては正社員と同じ賞与を支給しなければならない」とされています。一方、「退職金」については、具体的な事例は示されていませんが、基本的な考え方の中で「不合理な待遇の違いの解消が求められ、労使により個別の事情に応じた待遇の議論が望まれる」としています。

この裁判についての最高裁判所の資料はこちら(NHKサイトを離れます)

審査対象の裁判官たちの判断は

  • 林 道晴

    結論と同じ 補足意見あり

    格差が不合理かどうか判断するには労働条件の性質や定めた目的を踏まえて検討すべきだ。この会社の退職金が持つ複合的な性質や支給目的を踏まえて正社員と契約社員の仕事の内容を考えると、支給しないことが不合理とまではいえない。

  • 宇賀 克也

    結論に反対

    この会社で正社員に支給される退職金は、継続的に勤務した人への功労報償の性質を含んでいて、契約社員にも当てはまるものだ。売店の販売業務をする正社員と契約社員との間では業務の内容や、配置転換などに大きな違いはなく正社員と契約社員との間で退職金の支給に格差があるのは不合理だと評価できる。

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