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性別変更「未成年の子なし要件」憲法違反か2021年11月30日決定
第3小法廷

どんな
裁判か

  • 未成年の子どもがいると戸籍上の性別変更を認めない性同一性障害特例法の規定が憲法違反か争われた裁判
  • 「憲法に違反しない」とする初めての判断示す
  • 5人の裁判官のうち1人は「憲法違反」の反対意見

性同一性障害と診断された兵庫県に住む50代の会社員は、性別を適合させるための手術を受けたあと、戸籍上の性別を男性から女性に変更するよう求めました。
会社員には前の妻との間に10歳の子どもがいて、性同一性障害特例法で戸籍上の性別を変えるには「未成年の子どもがいないこと」と規定されているのは憲法違反だと主張しましたが、神戸家庭裁判所尼崎支部と大阪高等裁判所で行われた審判で認められず、最高裁に抗告しました。

最高裁第3小法廷は、未成年の子どもに関する規定について「憲法に違反しない」とする初めての判断を示し、抗告を退ける決定をしました。会社員の性別変更は認められませんでした。

「未成年の子どもがいないこと」という規定は、法律が施行された時には「子どもがいないこと」とされていましたが、子どもが成人した場合には性別を変更できるよう、その後の法改正で緩和されました。

改正前の2007年に最高裁は当時の規定について「家族の秩序を混乱させ、子どもの福祉の観点からも問題が生じないよう配慮したもので合理性がある」として憲法違反ではないとする判断を示していて、今回の決定はこれを踏襲した形です。 一方、5人の裁判官のうち1人は「憲法違反だ」として結論に反対する意見を述べました。

性同一性障害特例法めぐる最高裁の判断

戸籍上の性別変更を認める性同一性障害特例法では、性別を変える要件としてほかにも、20歳以上であること、現在、結婚していないこと、生殖腺や生殖機能がないことなどを規定していて、過去にも最高裁の判断が示されています。

このうち生殖機能をなくす手術を受ける必要があるとする規定については、2019年1月に「変更前の性別の生殖機能によって子どもが生まれると社会に混乱が生じかねないことなどへの配慮に基づくものだ」として憲法に違反しないとする初めての判断を示しました。
裁判官4人のうち2人は「憲法違反の疑いがあることは否定できない」とする補足意見を述べています。

2020年3月には結婚に関する規定について、「異性の間だけで結婚が認められている現在の婚姻秩序を混乱させないように配慮したもので、合理性に欠くとはいえない」として、憲法に違反しないと判断しています。

司法統計によりますと、特例法が施行されてから2020年までに全国の家庭裁判所で性別変更が認められたのは1万301人にのぼり、当事者やその支援者などで作る全国組織「LGBT法連合会」は、規定の撤廃など法律の抜本的な見直しを早期に行うよう求めています。

この裁判についての最高裁判所の資料は
こちら
(NHKサイトを離れます)

審査対象だった裁判官たちの判断は

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