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“秘密のベール”? 裁判官はどう議論しているの?

最高裁でも、地裁や高裁と同じように裁判官のグループ(「小法廷」)ごとに案件が割り振られます(「“運命の分かれ道” 3つの小法廷」参照)。案件ごとに裁判長を決め、意見を交わします。最高裁の審理は、当事者が提出した書面を読む作業が中心で、「持ち回り審議」といって書類や自分の意見をまとめたメモを裁判官の間で回覧して結論をまとめる場合が多いようです。ただ、重要な案件は顔を合わせて本格的に議論します。そして法廷を開く場合は(「多くは“門前払い” そのワケは?」参照)、「弁論」という手続きをとって、双方から意見を聞くこともあります。

裁判官は意見の一致を目指して議論しますが、意見が分かれたらどうなるのでしょうか?最後は「多数決」で決まります。最高裁は大法廷(15人)で判断する場合と小法廷(5人ずつ3つのグループ)で判断する場合があるので、大法廷は8対7、小法廷は3対2で決まります。例えば、このサイトの「主な裁判」に載せている「米軍基地移設に伴う辺野古サンゴ移植訴訟」「袴田事件」は3対2で結論が決まりました。最高裁は、地裁や高裁とは違って、「どの裁判官がどんな意見だったのか」を判決文などに明示するので、何対何で決まったのかがわかるのです。地裁や高裁は「合議の秘密」を理由に個々の裁判官の意見は明かされません。

なぜ最高裁だけ個人の意見が明かされるのでしょうか?それは、まさに国民審査の判断材料になるからです。このルール(裁判所法11条)が定められた時の国会(当時は帝国議会)の会議録を見ると、当時の司法省の担当者は「國民審査等に依る各裁判官に對する認識の資料に致したい」と説明しています。まさに私たちが国民審査で各裁判官に「×」をつけるかどうかの判断材料のために裁判官の意見が明示されることになったのです。やはり、日ごろから最高裁の判断に関心を持つことが大切ですね。