トランプ前大統領が抱える裁判とは?予備選期間中に公判も

トランプ前大統領は4つの刑事裁判を抱えています。いずれの裁判についても「起訴は選挙妨害を目的とした司法権の乱用だ」などと反発していて、無罪を主張し、全面的に争う姿勢を示しています。

大統領選挙手続き妨害

2021年にトランプ前大統領の支持者らが議会に乱入した事件をめぐり、その前の年に行われた大統領選挙の結果を覆そうと、結果を確定する手続きを故意に妨げたとして国家を欺こうとした罪など4つの罪に問われています。検察側はトランプ氏が「選挙では不正があり、勝利したのは自分だ」などと主張したことが議会乱入事件につながったとも指摘しています。

初公判は首都ワシントンにある連邦地方裁判所で2024年3月4日に開かれる予定でしたが、延期が発表されました。新たな期日は示されていません。

機密文書を自宅で不正保管

2021年の退任後に核兵器や軍の能力に関する情報など、最高機密を含む文書を不正に自宅で保管していたとしてスパイ防止法違反の罪に問われているほか、証拠として提出を求められていた南部フロリダ州の自宅、「マー・アー・ラゴ」の監視カメラの映像を削除しようとしたとして司法妨害の罪でも起訴され、あわせて40件で罪に問われています。

トランプ氏の自宅「マー・アー・ラゴ」に保管されていたとされる機密文書

検察側はトランプ氏が退任に伴い、ホワイトハウスから多数の機密文書が入った箱を自宅に運ぶよう指示したとしていて、中にはトイレやシャワー室で保管されていたものもあったということです。

ジョージア州の選挙結果を覆そうと州政府に圧力

2020年の大統領選挙で敗れた際に南部ジョージア州での敗北の結果を覆すよう、州政府に圧力をかけたとして、組織的な犯罪を取り締まる州法に違反した罪など13件で罪に問われています。トランプ氏の顧問弁護士だったジュリアーニ氏を含む側近など18人も起訴されました。起訴後に拘置所に出頭した際に手続きとして撮影された顔写真は当局によって公開され、トランプ氏の陣営が逆手に取る形でTシャツなどのグッズにして販売しています。

トランプ氏のグッズを販売しているオフィシャルサイト

不倫の口止め料支払い巡る業務記録改ざん事件

2016年の大統領選挙前にみずからの不倫の口止め料の支払いをめぐり、業務記録を改ざんしたとしてあわせて34件で罪に問われているものです。検察側は選挙で不利になる情報を隠すためのものだったとし、選挙の公正さを損なう行為だと指摘しました。初公判は東部ニューヨーク州の地方裁判所で2024年4月15日に開かれました。評決までには2か月程度かかる見通しです。

民事裁判も 異例の裁判と選挙同時進行

さらにトランプ大統領は民事裁判も3つ抱えています。そのうちの1つは、口頭弁論の開始日が党の候補者選びのスタートを切るアイオワ州の党員集会の日と重なっています。

大統領経験者が起訴されたことはこれまでにありません。大統領選挙の候補者がこれだけの件数の裁判を抱えながら選挙戦に臨むことも異例です。トランプ前大統領をめぐっては、選挙戦に加えて、裁判の行方も注目されています。