甚大な被害が出ているトルコ南部の都市、カフラマンマラシュ。
地震の発生から5日がたった今月11日、倒壊したマンションの捜索現場の近くで、たき火をして寒さをしのぐ家族がいました。

「少しでも夫のそばにいたいんです」
そう話すカドリエさん。
行方が分からなくなっている夫は当時、ひとりで自宅のマンションにいて倒壊に巻き込まれたといいます。ずっと、この場所で、息子と親戚と捜索を見守っています。

カドリエさんは前日、子どもたちを連れて旅行に出かけていました。
カドリエさんが携帯電話を取りだし、通話履歴の画面を見せてくれました。夫と最後に話したのは、地震が起きる4時間前でした。雪が降りそうだと天気を心配し、旅行中のカドリエさんと子どもたちを気遣ってくれたといいます。

カドリエさん
「夫は暗いところに閉じ込められ、怖がっていると思います。こんなことが起きるとわかっていれば、夫を1人にはしなかったのに」
取材の最中、突然、カドリエさんを呼ぶ声が聞こえました。
「誰かが見つかったらしい」
カドリエさんも含め、そこにいた人たちが一斉に走り出しました。

倒壊したがれきから男性が見つかったというのです。男性はすでに息絶えていて、車両に運ばれるところでした。カドリエさんは男性の体を包んでいたカバーを開け、顔を確認していました。
戻ってきたカドリエさんは「夫ではありませんでした…」と疲れ切った表情でそうひと言だけ話すと、そばにいた親族と抱き合いながら声をあげて泣き出しました。
すでに生存率が著しく下がるとされる災害発生から72時間を大きく過ぎています。現場で遺体が見つかり、自らの家族だとわかると、その場に泣き崩れる人たちもいました。それでも被災地では救出の報告も相次いでいます。
張り詰めた緊張と、見つかったという声に託す希望。一方で、相次ぐ遺体の発見という厳しい現実。身元を確認するため顔を見なければいけない極限状態がカドリエさんを襲います。

カドリエさん
「遺体を見るたびに、その損傷が激しいのを目の当たりにし、夫も亡くなっているのではないかと思ってしまい、本当に辛いです」
地震が発生して1週間がたった13日。再び捜索現場を訪れると、カドリエさんたちの姿がありました。
あちらこちらで建物が崩壊し、壊滅的な被害が広がる町。それでもわずかな望みをもって、大切な家族の生還を待ち続ける人たちが、そこにいました。