15歳から消えた笑顔
ワリエワ選手は今シーズンシニアデビューしたばかりの15歳。
金メダルを獲得した団体後の記者会見で、はにかんだ笑顔で次のように話していた。
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カミラ・ワリエワ選手
「オリンピックに来られてとても幸せです。大会はすばらしい雰囲気なので私はすべてを楽しみたいし、次の夢も必ず実現できると信じている」
“次の夢”とは、3歳のころから周囲に言い続けてきたという女子シングルでの金メダル。しかし、その夢をかなえるはずの舞台を取り巻く状況はわずか数日で一変した。
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去年12月の大会で受けたドーピング検査で禁止薬物の陽性判定が出たことが判明。団体のメダルの取り扱いや、みずからの大会出場の可否が問われる事態に発展した。
圧倒的な強さから“絶望”の異名で呼ばれ、今大会注目の15歳に起きた前代未聞の不祥事。
さらに過去の組織的なドーピング問題によってROCとして出場している選手であることから、会場の関係者の間で“スキャンダル”ということばが飛び交う状況となった。
そして、ワリエワ選手から笑顔が消えた。
“公平性” 求める声相次ぐ
その後、CAS=スポーツ仲裁裁判所がワリエワ選手が16歳未満の「要保護者」にあたることなどを考慮して継続して大会に出場することを認める判断を示した。
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これを受けて、IOCは団体と女子シングルの成績を「暫定的」なものとして扱うことを明らかにした。
この一連の対応が、ドーピング問題に対するIOCの姿勢に疑念を残す結果となった。
海外のメディア関係者
「ワリエワの出場は認めないべきだった。厳しく罰しないとロシアをはじめ各国が制度を悪用する。IOCがなぜ柔らかく対応しているのかが分からない」
選手の間にも不安や不信感が広がった。
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エバ ロッタ・キーバス選手(エストニア)
「ドーピング検査で陽性だったなら陽性。テストの結果がすべてを語っている」
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ルナ・ヘンドリックス選手(ベルギー)
「みな大人たちの競争の場としてここに来ている。年齢に考慮することなくフェアな扱いをするべき」
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カレン・チェン選手(アメリカ)
「オリンピックに限らず、どんなスポーツでも公平性が重要で、公平性が保たれないのであれば競い合う意味がない。選手にとってどんなに練習しても絶対に追いつかないことが明白な中で、厳しい練習を続けるのはとても難しい」
ワリエワ 失意のなかで
17日、ワリエワ選手は後半のフリーに臨んだ。
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最終グループ、最終滑走。
「ボレロ」の音楽にあわせて静かに滑り出した。
会場にひときわ映える赤と黒の衣装。
しかし輝きを放つことはなかった。
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ジャンプは乱れ、転倒も繰り返した。
演技が終わると、両手で顔を覆った。
そして、うつむいたままリンクをあとにした。
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ショートプログラムのトップから暫定4位まで順位を落とし、メダルには届かなかった。
“迷い”がかいま見えた気がした。
正式な処分は今後下されるが、出場した大会すべてで勝利し、世界最高得点を塗り替えてきたその実績に対しても、ドーピング問題が暗い影を落としている。
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本来あるべきもの
会場に広がった騒然とした雰囲気。
それを1人の選手の笑顔が振り払った。坂本花織選手だ。
自分自身ができる精一杯の演技を、4年に1度しかないリンクの上で表現し、銅メダルを勝ち取った。
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坂本花織選手
「スケートをつうじて自由や喜びを伝えていこうとプログラムを滑ってきた。それを出しきれたのはうれしい」
努力を重ねたうえで誇りと思いを持って臨むからこそ、オリンピックという舞台には“笑顔”と“涙”がある。
だからこそ“公平公正であるべき”という選手のことばに耳を傾け、大会関係者はその声に正面から向き合わなければならない。