ロコ・ソラーレ再び五輪へ
「ロコ・ソラーレ」はトリノ、バンクーバーとオリンピックに2大会出場した本橋麻里選手が中心となって2010年に結成されました。チーム名には地元から太陽のように輝いてほしいという願いが込められています。
何手も先を読み、対戦相手の出方をうかがいながら、40m先のハウスに向かって繰り返しストーンを押し出す。その戦略性の高さから『氷上のチェス』とも称されるカーリング。ただ、チェスとは大きく異なる点が1つあります。それは、そこには必ずチームメートがいるということです。
北京オリンピックに臨むカーリング女子日本代表の「ロコ・ソラーレ」。見据えているのは2大会連続となるメダル獲得です。
(スポーツニュース部 記者 阿久根駿介)
「ロコ・ソラーレ」はトリノ、バンクーバーとオリンピックに2大会出場した本橋麻里選手が中心となって2010年に結成されました。チーム名には地元から太陽のように輝いてほしいという願いが込められています。
カーリングの盛んな地域で育った選手たちが着実に力をつけて、迎えた2018年のピョンチャンオリンピック。
当時は「LS北見」として、カーリングで日本初のオリンピックのメダルとなる銅メダルを獲得しました。
一躍、注目を集めることになった彼女たちが試合中に使っていた「そだねー」ということばはその年の新語・流行語大賞にも選ばれました。
あれから4年。再びオリンピックという舞台に立つメンバーの自然な笑顔やその振る舞いに変わりはありませんが、国内外のライバルたちの厳しいマークに合う中、歩んできたこの1年の険しい道のりを経て、その強さはより輝きを増しています。
2021年2月の日本選手権。この大会で2連覇を達成すればロコ・ソラーレは北京オリンピックの日本代表としての権利を手中に収めることができたはずでした。
好調だったチームは予選リーグ6戦全勝、プレーオフをへて決勝に駒を進めました。
決勝の相手は北海道銀行。ロコ・ソラーレのメンバーと同じ北海道北見市出身のスキップ吉村紗也香選手を擁する、これまでも激しい戦いを繰り広げてきた強豪チームです。
ロコ・ソラーレは、この大会で北海道銀行に2連勝とつけいる隙を与えてはいませんでしたが、思わぬアクシデントからほころびが生じます。それは第4エンド、北海道銀行の吉村選手のラストショットでした。
スイープをしていた北海道銀行の選手とロコ・ソラーレの藤澤選手の動きが重なりました。相手選手がストーンに触れたと申し出て、確認し合った結果、触れたとされたストーンは取り除かれ、このエンド、ロコ・ソラーレに2点が入りましたが、藤澤選手は自分のプレーが相手に影響してしまったのではないかと、この時のことが、しこりのように残りました。
試合後に「困惑してしまった」と振り返った藤澤選手は、気持ちを切り替えることができないまま1点リードで迎えた最終第10エンドのラストショットを狙いどおりに決められませんでした。
結果は6対7でロコ・ソラーレの逆転負け。藤澤選手の目から悔し涙がこぼれ落ちました。
連覇を逃したロコ・ソラーレは2021年9月、北海道銀行と再び相まみえます。
先に3勝したチームが北京オリンピックに続く切符を手にする代表決定戦です。
3日間で最大5試合が行われるこの決定戦、ロコ・ソラーレはいきなり崖っぷちに立たされました。
チャンスをつかみながらも流れが悪い試合展開が続き2連敗を喫してしまったのです。
あとがなくなったメンバーは互いに声を掛け合いました。
「全力で、感情を出してプレーしよう」
このことばをきっかけに、連敗をしたのは運が悪かっただけ、運が悪いのはしかたない。自分たちらしさは失わずにいこう。そんな前向きな気持ちが湧き出てきました。
半年あまり前には最後の最後まで感情をあらわにしなかった藤澤選手も仲間のナイスショットに笑顔を見せ、自分自身が満足できないショットには眉間にしわ寄せながら、サードの吉田知那美選手と対策を練りました。
そんな「喜怒哀楽」を前面に押し出したプレーで流れを引き寄せ、チームは2連敗のあと2連勝。最終第5戦にまでこぎ着けると、勢いはロコ・ソラーレのものになっていました。
日本選手権と同じ1点リードで迎えた第10エンド。藤澤選手がラストショットを決めて8対6で勝利。氷の上で喜びを爆発させました。
「勝ちにこだわるより、プレースタイルや中身にこだわるほうが結果がついてくる」
今のロコ・ソラーレについて、チームを結成し日本カーリング界を引っ張ってきた1人でもある本橋麻里選手はこう表現します。
2021年12月、日本代表としてオリンピックの出場枠を勝ち取るために戦った世界最終予選では、まさに、自分たちのプレースタイルを貫いたことが功を奏した試合がありました。
ロコ・ソラーレはこの大会で、勝てばオリンピック出場が決まるプレーオフに回ります。
プレーオフは、前回のピョンチャン大会で銀メダルを獲得した韓国との対戦になりました。韓国は「めがね先輩」の愛称で親しまれているキム・ウンジョン選手がスキップを務めるチームで、ピョンチャン大会では準決勝で敗れた相手です。
最終予選の試合会場は刻々と変化するアイスの状態がつかみづらく、出場したチームはいずれも手を焼いていましたが、プレッシャーがかかるこのプレーオフでも、ロコ・ソラーレは守りに入らず積極的に仕掛けました。
試合前半にミスはあったものの、それも「アイスの情報を得るためには必要」と割り切って、後半の第7エンドと第8エンドの2連続スチールにつなげて8対5で勝利。2大会連続のオリンピック出場を勝ち取りました。
ミスがあったとしても仲間を信じて支え合い、自分たちのプレーを追い求め続けた成長の証しでもありました。
スキップ 藤澤五月
「オリンピックではもっといいパフォーマンスをみせられるように頑張りたい」
リード 吉田夕梨花
「オリンピックではあるがやっていることはカーリングなので、大きく変えることなくロコ・ソラーレらしい試合をしていきたい」
セカンド 鈴木夕湖
「気合いと根性で自分たちらしい試合をひとつひとつ重ねていきたい」
サード 吉田知那美
「この大会では自分たちのベストパフォーマンスを更新できなかった。もっとやりたかったことがあったので、しっかり準備したい」
リザーブ 石崎琴美
「緊張する場でも気持ちを一つに戦えたのはチームとして大きな収穫だが、課題もしっかり見えたので、修正しながら準備していきたい」
女子の世界ランキング1位で予選リーグの初戦で対戦する、スウェーデンのスキップ、アンナ・ハッセルボリ選手はロコ・ソラーレの印象をこう話しています。
「カーリングが大好きで、いつも笑顔があるチームだと世界でも認められている。そして、常にアグレッシブに攻めてくる」
世界がその実力を認め、警戒するロコ・ソラーレの強気なカーリング。試合がどんな展開になったとしても感情を抑え込まず、互いの力を信じて貫くことが出来たとき、2大会連続のメダル獲得がはっきりと見えてきます。
ポジション | リード |
出身地 | 北海道北見市出身 |
生年月日 | 1993年7月7日生 |
ポジション | セカンド |
出身地 | 北海道北見市出身 |
生年月日 | 1991年12月2生 |
ポジション | サード |
出身地 | 北海道北見市出身 |
生年月日 | 1991年7月26日生 |
ポジション | スキップ |
出身地 | 北海道北見市出身 |
生年月日 | 1991年5月24日生 |
ポジション | リザーブ |
出身地 | 北海道旭川市出身 |
生年月日 | 1979年1月4日生 |
2010年 8月 |
チーム結成 |
2014年 6月 |
吉田知那美選手 チーム加入 |
2015年 5月 |
藤澤五月選手 チーム加入 |
2016年 2月 |
日本選手権 初優勝 |
2016年 3月 |
女子世界選手権 銀メダル |
2017年 2月 |
日本選手権 準優勝 |
2017年 9月 |
日本選手権 準優勝 |
2017年 9月 |
ピョンチャンオリンピック代表決定戦 勝利 出場権獲得 |
2018年 2月 |
ピョンチャンオリンピック 銅メダル |
2020年 2月 |
日本選手権 優勝 |
2021年 12月 |
北京オリンピック世界最終予選 出場権獲得 |
吉田夕梨花選手はリード。北海道北見市出身の28歳です。冷静な状況判断と安定したショットが…
鈴木夕湖選手はセカンド。北海道北見市出身の30歳です。力強いスイープが持ち味で…
吉田知那美選手はサード。吉田夕梨花選手の姉で、北海道北見市出身の30歳です。氷の状況…
藤澤五月選手は、北海道北見市出身の30歳。さまざまな作戦を駆使して試合を…
控えとなるリザーブの石崎琴美選手は、北海道旭川市出身の43歳。日本選手権で5回優勝…
前回ピョンチャン大会の日本選手の活躍を振り返ります。