どんな状況でもネバーギブアップでチャレンジングで前向きな姿勢が当たり前

羽根田卓也

カヌー

2016年リオデジャネイロオリンピック、カヌーで日本選手初のメダルとなる銅メダルを獲得した羽根田卓也(32)。2019年秋に、東京オリンピックの出場を内定させた日本カヌー界の第一人者だ。新型コロナウイルスの影響で東京大会が1年延期に。それでも前向きな言葉が並ぶ。

「自分はまだコースでトレーニングができていない、後れをとっているという不安はあります。でも嘆いて解決しない問題は嘆かない。そんな暇があったら自分のすべきことをひとつでも多くやっていこうと。そういう強い意志を持つことが大切だと思っています」 

外出自粛のため練習が思うようにできなくても、風呂でパドルをこいだり、ハンマーで庭の土を叩いて全身を鍛えたりと自宅でできるユニークなトレーニング動画をSNSで発信。ユニークな“おうち時間”が話題になっている。

「スポーツの前向きなエネルギーやポジティブな精神を皆さんにお伝えして何か感じ取ってもらうことは、スポーツ選手として最も大切な仕事のひとつかなって…」

羽根田の“前向きで、強い意志”。その姿勢は地元、愛知県豊田市で過ごした高校時代に培われたという。当時、競技人口は少なく、所属していたカヌー部でスラロームの選手は自分だけ。みずからメニューを考え、朝練に行き、1人でトレーニングをして帰る日々を繰り返していた。

「その時に支えになったのは、ゆるぎない目標や信念でした。1人で練習している時にずっと、いま自分は何をするべきなのか、人生で何を成し遂げたいのか、そんなことばかりを考えていたから、常にポジティブな選択肢を考えるようになったかもしれません」

自分と向き合い、考え続けた末、羽根田は高校卒業後、単身でカヌー強豪国のスロバキアに渡る。道なき道を進む決断だった。

「唯一不安だったのは、このまま日本にいて世界の選手と戦えるのか。それだけでした」

新型コロナウイルスの影響で高校総体など多くの大会が中止となった。前を向くことが難しい若い選手たちには、この経験を将来につなげてほしいと考える。

「気軽にアドバイスはできないと思うんですけど、唯一言えるとしたら、夢や目標に費やしたエネルギーだとか時間とかは必ず自分の成長につながっていたり、これからの大きな財産になると思う。なんのためにやってきたんだろうと、それと無駄と思わずに、自分の財産になると誇りをもって次の舞台に進んでいってほしいと思います」

どんなに困難な局面が続いても、羽根田の強い意志が揺らぐことはない。

「スポーツ選手はコロナと関係なしに、どんな状況でも、ネバーギブアップでチャレンジングで前向きな姿勢が当たり前だと思います。東京オリンピックが1年延期になったことは、自分にマイナスになるとは全く考えていません。まだまだ成長できる伸びしろがあると思っているので、自分が求める結果をとことん追求していきたい」

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