出場できなかった東京オリンピックはもう終わった過去のこと

織田夢海

スケートボード #自分を奮い立たせたいとき

思わず涙がこぼれた。
2022年10月30日。16歳の誕生日を迎えたその日、織田夢海が大会で優勝を決めるトリックを見せると、それまで戦っていたライバルたちが駆け寄り、誕生日を祝うバルーンを掲げた。
「技を決められたことも、優勝できたこともうれしいが、誕生日を祝ってくれたサプライズが何よりうれしかった」

東京オリンピックで注目されたスケートボード。試合では競い合う選手たちが、互いの挑戦をたたえ合う姿は、スポーツの新たな姿を印象づけ、大会のハイライトのひとつとなった。

あれから1年。織田は今、急成長を見せている注目のスケーターだ。

小学2年生でスケートボードを始め、11歳にして日本選手権で2位に入るなど、早くから将来を期待される存在だった。

東京オリンピックの直前まで、世界ランキングで日本の上位3位に入っていたが、最後の選考対象の大会だった世界選手権で20位に沈み、目前で出場を逃した。
そのオリンピックでは、1学年下の西矢椛と、1学年上の中山楓奈がメダルを獲得した。

「自分ならその場にいて何ができただろうかとか、どうやって流れを作っていったんだろうと、見ながらたくさん考えていた」

失意の中、織田はオリンピックへの強い思いを新たにした。
そんな織田を支えているのが、みずからの得意技「キックフリップ」だ。
今はボードを裏表に1回転させる「キックフリップ」を使った大技の習得に力を入れている。成功させれば高得点が望める技の成功率を高めるため、何度も転びながら感触を体に染みこませている。


「すぐには気持ちは切り替えられなかったが、東京オリンピックはもう終わった、過去のことなので」

7月にはアメリカで行われた世界最高峰の大会「Xゲームズ」で3位。
同じ月に行われた、パリオリンピック最初の選考対象となった国際大会でも、表彰台を独占した日本勢の一角に食い込む3位に入った。


「東京オリンピックの前は全然、表彰台に立てなくてすごい悔しい思いをしていた。1年間、たくさん練習してきて、やっとここまでみんなに近づけたと思う」


世界トップレベルの日本女子の中で、パリオリンピックの切符を手にすることは簡単ではない。それでも織田は、ただひたすら前を向き自らの技術を磨き続ける。

スケートボード #自分を奮い立たせたいとき