いつか来るその日のために備えた者だけにチャンスが訪れる

大瀬良大地

野球

プロ野球、広島の大瀬良大地はエースとしての階段を着実に上ってきた。
尊敬する前田健太以来となる3年連続の2桁勝利を挙げ、2019年末にはかつてのエース、佐々岡真司監督から早々に開幕投手を託された。
穏やかな大瀬良から発せられた、これまでにない強いことばに、2020年にかける思いが伝わってきた。

「これだけ大きな期待をかけてもらって、恩返しができなければ、男ではない」

開幕に向け、大瀬良はキャンプから一つ一つ課題を潰してきた。
2019年シーズン、夏場に失速した反省を踏まえた例年以上の走り込み。
オープン戦が始まってからは、投球の幅を広げようと、ふだんは使用頻度が少ないカーブやフォーク意図的に多く投げる試合もあった。
エースとしての活躍を期待させる調整ぶりだった。
しかし、3月9日。新型コロナウイルスの感染拡大により開幕の延期が決定。
見通しが立たない状況が続く中、当然、練習時間も内容も満足のいくものではなくなった。
それでも大瀬良は努めて前を向いている。

「これまでない経験なので、難しいは難しいが、それでも工夫して感覚を維持していく。
それも仕事の1つ。
暗く練習しても身にならないので、精いっぱい士気を高めてやっていく努力はしています」

苦しい時、つらい時。
大瀬良が支えにしてきたことばがある。

「いつか来るその日のために備えた者だけにチャンスが訪れる」

大学時代の恩師が常々口にしていたことばだ。
新型コロナウイルスの影響で先が見えない今だからこそ、この意味をかみしめている。

「今置かれているこの状況は、まさに当てはまるのかなと思う。
このことばを大事にして、ぐっとこらえて、やれる準備をやっていく」

大瀬良は自身をまだ「真のエース」だとは捉えていない。
エースとして求められることは何か?
彼はすでに明確な答えを持っている。

「野球も生活もすべての人に認めてもらえること。
そしてここぞの試合で任せたと言ってもらえること」

苦難を乗り越えた先にエースとしての未来が待っている。
その日のために、大瀬良は今できる準備を進めていく。

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