目の前の試合に集中してやればその先に道はひらける

板倉滉

サッカー

25歳の板倉滉は1対1の局面での強さや球際でボールを奪う能力が持ち味のディフェンダー。主にセンターバックを務める。
日本代表のセンターバックはキャプテンの吉田麻也とイングランドプレミアリーグのアーセナルでプレーする冨安健洋といった強力なライバルがいるが、板倉の存在感は日に日に増している。

ターニングポイントになったのは、2022年1月に行われたアジア最終予選の中国戦。負ければ本大会への出場が一気に危ぶまれる中、吉田と冨安のケガで板倉に出番が回ってきたのだ。
初めてピッチで味わう最終予選の緊張感から「いつもと感覚が違った」と振り返るが、重圧の中でも安定感のある守備で相手にほとんどチャンスを作らせることなく、無失点で終えた。

「あんなに日本のために、見ている人のために、戦わないといけないと思ったのは初めてだった。ここでやらないと終わりだという気持ちだった」

そこから3月までの最終予選で3試合連続でフル出場して無失点を続け、日本の本大会出場に大きく貢献した。

板倉にとってはドイツ2部リーグでプレーした経験が大きかったという。
シャルケの守備の要としてチームを優勝と1部昇格に導いた。

身長1m86cmの板倉でも「対戦したフォワードは基本的に自分より大きい」と言い、体格差のある相手にどう対抗していくか、知恵を絞りながら持ち味に磨きをかけた。

「一歩先に動いて相手のタイミングで戦わないようにしたりした。相手の嫌がることをしてどうやってボールを奪うかを常に考え、それができたシーズンだった」

さらに、自己最多の4得点をマークし、攻撃面でも自信を深めた。「点を取れるディフェンダー」としても成長を実感している。

ワールドカップに向けたメンバー争いが激しさを増した日本代表の6月の強化試合でも活躍が光った。
世界ランキング1位のブラジル戦でセンターバックとしてフル出場すると、世界屈指の選手、ネイマールを相手に粘り強い守備で存在感を示した。試合を追うごとに周囲の評価は高まり、いまや日本の守備陣に欠かせない存在になりつつある。

板倉がプレーするうえで大切にしてきたのが 「先のことは考えず目の前の試合に集中すること」だという。

「次の試合にどう向かっていくかしか考えていないし、その積み重ねしかない。Jリーグでプレーしていたときもそのやり方をしていたら(イングランドプレミアリーグの)マンチェスターシティから声がかかったし、(オランダ1部リーグの)フローニンゲンでプレーしたときもシャルケから声がかかった。目の前の試合に集中してやればその先に道はひらける」

板倉にとってワールドカップは 「日本という国を背負って戦うことができるいちばん大きな大会。これほど誇りに思えることはない」と話す。
強力なライバルとのレギュラー争いを制し、日本代表として必ずピッチに立つ。板倉はこれまで通りの意識で臨めばその道はひらけると信じている。

「急にポンと変わる序列でもないと思うので、出場した試合でしっかり自分を出して少しずつ認めてもらうことが一番大事だ。レギュラーに割って入っていかないといけないと思っているので、変わらず目の前の試合に集中してやっていくことがそこに繋がっていく」

サッカー