負けて知ることができた

吉田沙保里

レスリング

2019年1月10日の引退会見。吉田沙保里は、最後まで涙を見せなかった。

「もうすべてをやり尽くしたという思いが強く、引退を決断した」

オリンピックは2012年ロンドン大会まで3連覇。
世界選手権は前人未到の13連覇を達成し「絶対女王」「霊長類最強」とたたえられた。

「タックルで攻めるのが自分のいちばんの強みで自信を持っていました。
小さい時から父にたたき込まれたタックルを信じて、これまでずっとそのタックルで相手を倒してきました。絶対的に自信を持っていました」

2016年リオ五輪決勝。日本選手団主将として負けられないと臨んだ一戦だった。

「恐怖でプレッシャーがあった」

信じていたタックルをしかけられなかった。
吉田にとって、個人戦ではおよそ15年ぶりという敗戦。
涙が止まらなかった。

「初めて2番目の表彰台に上がった時に、負けた人はこういう気持ちだったのだなということを感じました。 こうやって戦う仲間がいたから頑張ってこられたと負けて知ることができた。リオの銀メダルが私を成長させてくれました」

4年に1度の舞台で味わった多くの喜びと、ただ1度の「涙」。
吉田にとって、オリンピックは紛れもなく特別な舞台だった。

「家族の応援と支えが夢を大きく持たせてくれたので、頑張れたのかと思います。4回の出場でいろんな人と出会えて、オリンピックで活躍することができたから、いまの私があるのかと思います。第2の人生を明るく笑顔で頑張っていきたい」

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