ポジティブな“バイブス”が広がっていくきっかけを作りたい

岡本圭司

パラスノーボード

スロープスタイルの第一人者として活躍していた元プロスノーボーダーの岡本圭司はスノーボードの撮影中に崖から転落するという大事故を経て、パラスノーボードに取り組むようになった。
そんな岡本がこだわるのが“かっこいい滑り”だ。

「いちばんかっこいいと自分が思える滑りができたら最高に満足すると思う。僕の中ではベストの滑りをするというのをいちばん求めている」

みずからのかっこいい滑りを表現すると臨んだ、初めての北京パラリンピック。スノーボードクロスは8位、バンクドスラロームでは13位と目指していたメダルには届かなかった。それでもレースを終えた岡本は笑顔だった。

「最高に楽しかった。やりきることができたし、ベストの滑りはできた」

楽しかったと言い切れたのは自分の滑りに満足したからだけではなかった。
レースを終えたあと、ほかの選手の滑りを食い入るように見ていた岡本は、ライバルたちの華麗なターンや、好タイムを全力で褒めたたえていた。
そこには、岡本が求める“かっこよさ”を表現してみせた仲間たちへの尊敬の思いがあった。

「スノーボードはどれだけ、自分たちでモチベーションを上げられるか、セッションできるかが楽しさとか、かっこよさだと思う。メダルが取れなかったのは悔しいけど、みんなでこうやって、ベストな大会を作れたというのが最高に楽しかった」

こうした気持ちや感情の高まりを“バイブス”ということばで表現する岡本。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続く中で開催されたパラリンピックだったが、そんな中でもスノーボードにできることがあると信じている。

「僕たちができることってなんなんだろうって思ったら、自分が少しでもポジティブを作って、周りに伝播させていくこと。そのポジティブなバイブスが広がっていくきっかけを作れるようになりたい。そのためには僕たちが精一杯滑ること」

パラスノーボード