常に戦いは続く。立ち止まらずに進んでいく

吉田麻也

サッカー

東京オリンピックで4位に終わったサッカー男子の日本代表。キャプテンの吉田麻也は3位決定戦のメキシコ戦に敗れたあとのインタビューで涙を浮かべながら話した。

「完敗でした。キャプテンとしてみんなを導けなかったのはとても悔しい」

日本代表の不動のキャプテンは、原則24歳以下で編成された東京オリンピックでも常にチームの輪の中心にいた。6月の合宿からオーバーエイジ枠としてメンバーに加わり、ランニングなどの練習メニューは必ず先頭に立って取り組んだ。
東京オリンピックは、守備の要として6試合すべてでフル出場。中2日という過密日程で、左のふくらはぎに分厚いテーピングを巻いて練習場に姿を現したこともあったが、2試合の延長戦を含めて合計の出場時間は600分にのぼった。ベテランの体は悲鳴を上げていたに違いないが、決して弱音を吐くことなく、若い選手たちに背中で見せた。存在感はピッチの外でも絶大だった。

「チームがしんどいときに、いい方向に導けるかどうかが本当のリーダーのポテンシャル」

準決勝のスペイン戦。試合に敗れ、日本代表は金メダル獲得の夢がついえた。翌日、選手の気持ちが折れかけていると感じた吉田は、ミーティングで自身が出場したロンドン大会の3位決定戦で韓国に敗れたときの映像を見せて訴えた。

「あのときのような思いはもうしたくないし、みんなにもしてほしくない」

悔しがる先輩たちの表情を目の当たりにした若い選手たちは、もう一度気持ちを立て直して3位決定戦のメキシコ戦に挑むことができた。1対3で敗れ、53年ぶりの銅メダル獲得とはならなかったが、チームの結束力は確実に高まった。
吉田は初めて出場した2008年の北京大会は予選リーグ敗退。2012年のロンドン大会は4位。「3度目の正直」でもメダリストの夢はかなわなかった。だがその表情からは充実感がうかがえた。

「最高に楽しかった。連れて行ってもらった北京大会、自分をアピールするロンドン大会、自分が導く東京大会。オリンピックに3回も出場させてもらった。こんなに幸運な選手はいない」

メキシコ戦を終えたあと、チーム最後の円陣で呼びかけた。

「これで終わりじゃない。もっと強くなって帰ってこよう。OK、胸を張って帰ろう」

日本代表は9月からワールドカップカタール大会のアジア最終予選に臨んでいる。次なる目標は来年のワールドカップに出場して過去最高のベスト8に入ることだ。

「この世代の選手が1人でも多く年齢制限のない代表に入って、ワールドカップに導いてほしい」

キャプテンの強いメッセージが込められていた。吉田は8月24日で33歳を迎えたが、いちばんのモチベーションという日本サッカーの強化のため、代表チームの先頭を走り続ける。

「僕自身も自分のパフォーマンスを示して代表で戦える準備をする。常に戦いは続く。立ち止まらずに進んでいきたい」

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