世界が変わることを変えられないのであれば、みずから変わる

高木美帆

スピードスケート

2020年5月23日。その前日が26歳の誕生日だった高木美帆はSNSを更新した。それは目には見えない、しかし確実に存在するものによって変化していく世界に向けた決意のことば。

「今できること
今しかできないこと
今だからできること
しっかりじっくり考えて
私なりにこの道を
進んでいきたいと思います」

「世界が変わることを
変えられないのであれば
それを嘆くのではなく、
みずから変われるように
挑戦していきたい」

15歳で初めてオリンピックのスタートラインに立ってから10年以上、体の中に刻んできたアスリートとしての時間。それは、シーズンに備えて夏に鍛え、その成果を確かめながら海外を転戦し、トップ選手たちとしのぎを削るというリズムだ。
ウイルスによって、その時間の流れをせき止められても高木が歩みを止めることはなかった。国際大会に参加できない逆境さえも糧にして日本で滑りを見つめ直した。国内最高記録を5回更新。2020年12月の全日本選手権では、500mから5000mの5種目に出場。そのすべてで表彰台の一番上に立って見せた。

「今できること 今しかできないこと 今だからできること」

誓ったあのことばのとおりに。

2022年。北京で開かれるオリンピックは、高木にとって前回のピョンチャンで手にすることができなかった個人種目の金メダルを手にするための舞台だ。高木は言う。

「前回は挑む気持ちだったが、次は戦う気持ちが強くなっていくと思う。自分自身や周囲からのプレッシャー、それにコロナ禍という環境とも戦いながら」

『挑む』から『戦う』場所へと変わった次のオリンピックまで1年を切ったいま、高木美帆の決意は揺るがない。

「世界が変わるのを 変えられないならば みずから変わってみせる」

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