【詳しく】ラグビーW杯 日本 イングランドに敗れ1勝1敗に

ラグビーワールドカップフランス大会、日本は1次リーグの第2戦で前回大会準優勝の強豪、イングランドと対戦し、12対34で敗れて1次リーグの成績は1勝1敗となりました。

記事後半では試合の詳しい経過をお伝えしています。

《日本 前半競るも後半突き放される》

世界ランキング14位で前回大会を上回るベスト4以上を目指す日本は初戦でチリに勝ち、17日、ニースで前回大会準優勝で世界6位のイングランドと対戦しました。

日本は初戦から先発メンバーを4人入れ替え、ふくらはぎのけがで初戦を欠場したキャプテンの姫野和樹選手やチーム最年長37歳のフッカー、堀江翔太選手などが先発出場しました。

松田力也選手

日本は試合開始早々、ペナルティーゴールで3点を先制されましたが、スタンドオフの松田力也選手が2つのペナルティーゴールを決めて6対3と逆転しました。

そのあと前半24分にラインアウトからのミスをきっかけにイングランドにトライを奪われ6対10と再びリードされました。32分に松田選手がペナルティーゴールを決めて1点差に迫りましたが、前半終了間際にイングランドにペナルティーゴールを決められ9対13で前半を終えました。

日本は後半14分、松田選手がこの試合4本目のペナルティーゴールを決めて再び1点差に迫りましたが、その2分後にイングランドにトライを奪われました。

このあと日本は松島幸太朗選手や途中出場のディラン・ライリー選手がスピードをいかした攻撃で大きく前進しましたが、トライを奪うことはできませんでした。

その後は、イングランドのボールを展開する攻撃に防戦一方となり、終盤、2つのトライで突き放され、12対34で敗れました。日本の1次リーグの成績は1勝1敗となり、勝ち点は5のままです。

日本は今月28日、日本時間の29日に1次リーグの第3戦で世界11位のサモアと対戦します。

番狂わせはならずも1次リーグ突破の可能性は十分残る

去年11月のテストマッチで13対52の大敗を喫した日本。雪辱を果たそうと挑み、最後まで粘りましたが再びイングランドの壁に跳ね返されました。この試合、過去1度も勝ったことのない相手に日本は「歴史を変えたい」と臨みました。

試合前、スタッフや選手たちは「相手は何をやってくるかわかっている」と口をそろえ、対策は十分だと話していました。ただ、スクラムは善戦したものの警戒していたキックで攻め込まれ、フィジカルが強い相手に徐々に押し込まれることが増えていきました。前々回、前回とワールドカップで格上に勝利してきた日本ですが、この試合は番狂わせとはなりませんでした。

ただ次のサモア戦、その次のアルゼンチン戦、そしてライバルチームの結果次第で1次リーグ突破の可能性は十分残されています。強豪イングランドとの対戦で出た課題を修正し、まずは7月のテストマッチで2点差で敗れたサモアに確実に勝利することが求められます。史上初のベスト4以上を目標に掲げる日本の戦いはこれからも続きます。

※BP=ボーナスポイント

《選手・ヘッドコーチ談話》

【ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ】
「日本のチームにはすばらしいリーダーシップがあり経験もたくさん積んでいたが、チャンスを生かすことができなかった。少し休んで、残りの大会も楽しみたい」

また試合後の会見では「選手たちを本当に誇りを持っている。良いプレーを続けていたが、イングランドのプレッシャーによってミスが生まれた。相手が経験豊富なチームだから そうなるのは自然なことだ。結果は残念だが、イングランドを驚かすことはでき、スクラムもかなりうまくいったと思う」と試合を振り返りました。そのうえで「イングランド戦で得たものを学習して、サモア戦に向けて準備を整えたい。準々決勝に進むためには次の2試合が重要になる」と次を見据えました。

【No.8 姫野和樹=キャプテン】
「相手に得点を重ねられてしまったのが反省点だ。前半はゲームメークできたがそれを後半につなげられず、タイトなゲームで地力の差が出てしまったことが負けの要因だと思う。今後もタフなゲームが続くのでそこを改善したい」また、試合後の会見では「チームの努力は誇りに思うし、全員がベストのパフォーマンスを出した中でトライをとれなかったのは残念だが、準備してきたものが多く出せたのでそこは収穫だ。率直に悔しい気持ちが大きいが下を向く時間はないので、次のサモア戦、アルゼンチン戦に向けて準備をしないといけない」と話していました。

【FL リーチ マイケル】
「スクラムでは戦えたが、相手がどんどん自分たちにプレッシャーをかけてきた。ただ、落ち込んでいる時間はないので、10分くらいだけ落ち込んで次に向けて準備したい。チャンスボールをうまく使えればもっと点が取れると思うので、ポジティブに切り替えて次のサモア戦も頑張りたい」

【SO 松田力也】
「本当にタイトなゲームで、前半はいい勝負をして後半も自分たちの流れでいいところまでいきましたけど勝ちきることができずに悔しいです。この負けを生かして前を向いて全員で準備して勝ち抜きます」

【SH 流 大】
「とにかく自分たちがやってきたことを信じて点数やゲームの結果は気にせず集中していた。ゲームプランは機能していて、途中までは勝てる展開までもっていけていたが、ちょっとしたことからプレッシャー感じて、主導権を握られてしまった。これで終わりじゃない。次のサモア戦に向けて完全に集中して準備したい」

【CTB 長田智希】
「緊張感があり、今までに経験したことがないような雰囲気だった。相手がキックでプレッシャーをかけてくるのはわかっていたので、それに対して僕らもキックを転がしてプレッシャーかけていこうと考えていた。前半はそこがうまくはまっていた」と試合を振り返りました。そのうえで、次のサモア戦に向けて「夏に対戦して負けている相手なので、すごく大事な試合になる。試合まで10日間くらいあるのでしっかり準備したい」と話していました。

【イングランド ボーズウィック ヘッドコーチ】
イングランド代表のスティーブ・ボーズウィックヘッドコーチは「選手たちは本当によくやった。日本はきちんとした戦術を立ててきて、ワールドカップのほかのチームがどこもしていないようなプレーをしてきた。そんな中でわれわれは結果を出すことができた」と話しました。そのうえで「きょうの日本はとてもスマートでいつもと違うやり方でプレーをしてきた。ディフェンスラインの裏にキックをしてくるなど予想外のプレーもあり、自分たちにとって厳しい試合にされた」と日本を評価していました。

【イングランド コートニー・ローズ=キャプテン】
後半にトライを決めたキャプテンのコートニー・ローズ選手は「自分のトライは運が良い面もあった。きょうは湿気や気温によりよく滑るので、難しいプレー環境にあった。チームとして4つのトライを決めることができ、確実に攻撃は向上している。毎日、うまくなるために努力をしているし、全力でやってきている」と話していました。

【SH ベン・ヤングス】
イングランド代表で歴代最多キャップを誇り、後半の途中から出場したスクラムハーフのベン・ヤングス選手は「日本は非常に賢明なコーチングと戦略を持っていた。われわれにとっては怖さを感じる、献身的なチームだと思う。厳しい戦いになるとわかっていたので、この結果には満足している」と話していました。

《試合スタッツ》

▽ボール支配率 日本34%イングランド66%
▽攻撃
ラン 日本72 イングランド130
パス 日本94 イングランド161
モール成功数 日本0イングランド5
ラック成功数 日本54イングランド99
▽セットプレー
スクラム成功率 日本85.7%イングランド81.8%
ラインアウト成功率 日本66.7%イングランド76.9%
▽ディフェンス
タックル 日本172 イングランド84
タックル成功率 日本82%イングランド79%

=試合詳細=

日本代表メンバー 初戦から4人変更

※=今大会初先発
【FW(フォワード)】

1.稲垣啓太(33)
※2.堀江翔太(37)
3.具智元(29)
4.ジャック・コーネルセン(28)
5.アマト・ファカタヴァ(28)
6.リーチ マイケル(34)
※7.ピーター・ラブスカフニ(34)
※8.姫野和樹(29)◆キャプテン◆
【BK(バックス)】
9.流大(31)
10.松田力也(29)
11.ジョネ・ナイカブラ(29)
12.中村亮土(32)
※13.長田智希(23)
14.松島幸太朗(30)
15.セミシ・マシレワ(31)
【控えメンバー(8人)】
16.坂手淳史(30)/17.クレイグ・ミラー(32)/18.ヴァル アサエリ愛(34)/19.ワーナー・ディアンズ(21)/20.下川甲嗣(24)/21.齋藤直人(26)/22.ディラン・ライリー(26)/23.レメキ ロマノ ラヴァ(34)

イングランドメンバー 初戦から3人変更

※=今大会初先発
【FW(フォワード)】

※1.ジョー・マーラー(33)
2.ジェイミー・ジョージ(32)
※3.カイル・シンクラー(30)
4.マロ・イトジェ(28)
5.オリー・チェサム(23)
6.コートニー・ローズ(34)◆ゲームキャプテン◆
7.ベン・アール(25)
※8.ルイス・ルドラム(27)
【BK(バックス)】
9.アレックス・ミッチェル(26)
10.ジョージ・フォード(30)
11.エリオット・デイリー(30)
12.マヌ・トゥイランギ(32)
13.ジョー・マーチャント(27)
14.ジョニー・メイ(33)
15.フレディー・スチュワード(22)
【控えメンバー(8人)】
16.テオ・ダン(22)/17.エリス・ゲンジ(28)/18.ウィル・スチュアート(27)/19.ジョージ・マーティン(22)/20.ビリー・ブニポラ(30)/21.ベン・ヤングス(34)/22.マーカス・スミス(24)/23.オリー・ローレンス(23)

3:40すぎ 試合会場に「とんぼ」が

試合前、日本のウォーミングアップ中に初戦と同様に長渕剛さんの「とんぼ」が流れると、ファンの歌声も響き渡りました。日本ラグビー協会によりますと、日本代表チームが大会の運営側にリクエストしたということです。

長渕さんの曲を流そうと提案したのは鹿児島県出身の中村亮土選手です。多くの人が知っているこの曲を会場で流すことを日本代表が食事をしている際に思いつき、同じテーブルのメンバーに提案して実現したということです。

4:02【試合開始】イングランドがキックオフ

日本の1次リーグの2戦目、イングランドとの試合は日本時間午前4時すぎにイングランドのキックオフで始まりました。日本は、開始直前にキャプテンの姫野選手がコイントスに臨み「エリア(攻める方向)」を選択することになりました。

リーチ マイケル W杯出場15試合 日本代表最多に

4大会連続出場のリーチ マイケル選手(34)がフランカーで先発し、ワールドカップの通算出場試合数を15に伸ばして日本代表として歴代単独最多となりました。リーチ選手は初戦のチリ戦で14試合とし、元日本代表のロックだったトンプソン ルークさんと並んでいました。

★【前半4分】イングランドがPGで先制 日本0-3イングランド

日本は試合開始直後にスクラムから自陣深くで反則を犯し、ジョージ・フォード選手にペナルティーゴールを決められ、イングランドに先制を許しました。

《豆知識》ペナルティーキック

「フリーキック」よりも重い反則をおかした時に相手チームに与えられるキックです。▽ゴールポストの間を狙って直接3点をとりに行く「ペナルティーゴール」や、▽タッチラインの外に蹴り出す「タッチキック」を選択できます。タッチキックを選択した場合、フリーキックの時とは異なりマイボールのラインアウトから試合を再開することができます。この場合、陣地を大きく回復したうえで、さらに攻め込むチャンスとなります。

【前半7分】日本 選手交代 マシレワ→レメキ ロマノ ラヴァ

日本は、右太ももを痛めた様子を見せたBKのセミシ・マシレワ選手に代わって、BKのレメキ ロマノ ラヴァ選手が入りました。

★【前半15分】日本 松田が同点のPG 日本3-3イングランド

日本は、連続した攻撃で攻め込み、相手の反則から松田選手がゴールほぼ正面の位置からのペナルティーゴールを決めて同点に追いつきました。

★【前半23分】松田の勝ち越しPG 日本6-3イングランド

日本は、相手のオフサイドの反則から松田選手がペナルティーゴールを決めて3点を勝ち越しました。松田選手は今大会プレースキックを8本蹴ってすべて成功しています。

★【前半24分】イングランドが逆転トライ 日本6-10

日本は、マイボールのラインアウトのミスからイングランドに自陣深くに攻め込まれ、トライを許し逆転されました。イングランドはキックも成功しました。

【前半30分】イングランド フォードのPGは失敗

イングランドのジョージ・フォード選手がペナルティーゴールを狙いましたが、右側に外れました。今大会フォード選手がキックを外したのは初めてです。

★【前半32分】日本 松田がPG成功 日本9-10イングランド

日本は、相手の反則から松田選手がペナルティーゴールを決めて1点差に追い上げました。

★【前半42分】イングランドがPG成功 日本9-13

日本は、前半終了間際に反則を犯して、前半30分にペナルティゴールを外したジョージ・フォード選手に今回はしっかりと決められ、4点差で前半を終えました。

【ハーフタイム】両チーム前半スタッツ

現地は午後10時を回りました。ハーフタイム時点の気温は25度です。
▽ボール支配率
日本 40% イングランド60%
▽攻撃
ラン 日本39 イングランド44
パス 日本42 イングランド54
モール成功数 日本0 イングランド2
ラック成功数 日本29 イングランド33
▽セットプレー
スクラム成功率 日本100% イングランド80%
ラインアウト成功率 日本83.3% イングランド77.8%
▽ディフェンス
タックル 日本61 イングランド43
タックル成功率 日本87% イングランド83%

【後半開始】日本 選手交代 具→ヴァル アサエリ愛

日本時間午前5時4分ごろ後半が始まりました。日本は、後半開始からFWの具智元選手に代わり、ヴァル アサエリ愛選手が出場しました。

【後半3分】日本 姫野の「ジャッカル」が相手の反則誘う

日本は自陣深くに攻め込まれていましたが、キャプテンの姫野選手がボールを奪いにいく「ジャッカル」で相手の反則を誘い、ピンチをしのぎました。

★【後半10分】日本 松田のPG成功 日本12-13イングランド

日本は相手の反則から松田選手がペナルティゴールを決めて、1点差に迫りました。

★【後半16分】イングランド TMOの末トライに 日本12-20

日本は、イングランドにトライを許しました。またキックも成功となり、追加点をあげられました。このトライとなったプレーでは、イングランドが日本ゴールライン前に迫りパスを回していた際にボールが前に転がり、そのボールをコートニー・ローズ選手がそのままインゴールに持ち込みトライをしました。

ボールが前に転がった場面が「ノックオン」のように見えたため、TMO(=テレビジョン・マッチ・オフィシャル)で映像による判定が行われた結果、ボールはイングランドの選手の手や腕ではなく頭に当たって前に転がっているのが確認されたため「ノックオン」ではないとしてイングランドのトライが認められました。

《豆知識》TMO

「テレビジョン・マッチ・オフィシャル」の略でビデオ判定のことです。トライが認定されるかどうか、不正なプレーがあったかどうかなどきわどい判断を明確に下せない場合、正確で公平な判定をするためにレフェリーの判断で行われます。この場合、レフェリーは両手でテレビのスクリーンを指す四角形を描くジェスチャーをします。TMO担当のレフェリーがさまざまな角度から撮影した当該シーンを確認してレフェリーの判断をサポートし、レフェリーはそれをもとに最終的な判定を下します。誤審を防ぎ正確なジャッジがなされる一方、判定や説明に時間がかかり試合がたびたび中断されるなどの課題も指摘されています。

【後半22分】日本 選手交代 坂手・ディアンズ投入

日本はFWの堀江選手に代わってFWの坂手選手、FWのアマト・ファカタヴァに代わってFWのワーナー・ディアンズ選手が入りました。

★【後半27分】イングランド追加点 日本12-27

日本は、イングランドのジョージ・フォード選手の絶妙のキックパスからライン際を突破されて、トライを許しました。イングランドはキックも成功して、日本を突き放しました。

【後半34分】日本 ゴール前で相手の連続攻撃を防ぐ

日本は相手の連続攻撃で自陣のゴールライン手前まで何度も攻め込まれましたが、粘り強いディフェンスで相手の反則を誘い、ピンチをしのぎました。

【後半35分】日本 選手交代 FW下川投入

日本はFWのピーター・ラブスカフニ選手に代わってFWの下川選手が入りました。

★【後半41分】イングランド4トライ目 日本12-34

日本は、試合終了間際にイングランドに4つめのトライを許し、キックも決められました。

【試合終了】イングランドは勝ち点「5」を獲得

イングランドのフォード選手のキックが決まった直後に試合が終わりました。日本は12対34でイングランドに敗れました。勝利したイングランドは勝ち点「4」のほか、4つのトライをあげたことからボーナスポイント「1」とあわせて、勝ち点「5」を獲得しました。

《各地で声援》

東京のスポーツバーでは

ラグビーファンの間で人気が高い東京 豊島区にあるスポーツバーには、およそ60人が集まって、大型のテレビで試合の様子を見守りました。

前半、前回大会で準優勝の強豪相手に、日本が2つのペナルティーゴールを決めて逆転すると、バーの店内は大きな歓声で包まれました。後半に入り、イングランドが得点を重ねて日本を突き放すと集まった人たちは悔しそうな表情を見せていましたが、試合が終わると拍手を送り、選手たちの健闘をたたえていました。

応援に来ていた40代の女性は「ワールドカップなので、みんなで盛り上がりたいと思って店に来ました。惜しい試合でしたが、きっと1次リーグを突破してくれると思うので、信じて応援したい」と話していました。

ロンドンのスポーツバーでは

ロンドンのスポーツバーにはイングランドのユニフォームを着たラグビーファンなどが集まり、訪れた人たちは後半、日本が1点差に詰め寄ると静まり返っていましたが、その後、イングランドがトライを決めて突き放すと大きな歓声を上げ、勝利が決まった瞬間は拍手をして笑顔を見せていました。

ラグビー好きの友人たちと訪れた女性は「前半は両チームともミスが多くやきもきしながら見ていましたが、イングランドには運も味方しました。日本は今のチームにさらに磨きをかければいいと思います」と話していました。