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トラックドライバーの労働時間の上限規制が始まりまもなく2か月。時間外労働が「実質無制限」から「年間960時間まで」に制限されました。
輸送効率化の取り組みが進む一方、農産物輸送の現場では、コスト負担が地方の農家にのしかかっている実態が見えてきました。
コスト増に悩む農家
長芋や長ネギなどを生産し全国に出荷している青森県。3代続く専業農家の内城慶富さんは、物流の2024年問題への対応でコスト負担が増え、自分の代で農家を畳むことも考え始めています。
専業農家 内城慶富さん
「厳しいんだもん。“貧乏暇なし”。金になるんだか、ならないんだか、分からない」
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ドライバーの負担減へ集荷を効率化
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内城さんがそう語る背景には、地元のJA八戸が進めている、ドライバーの負担軽減の取り組みがあります。
このJAではこれまで野菜を出荷する際、運送会社のドライバーが5か所ほどの集荷場を回って集めていました。
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しかしドライバーの労働時間の上限規制が適用され、運送会社の負担を減らす必要が出てきたため、JAが地区のすべての集荷場を回って野菜を1、2か所に集めることにしました。その結果JAの負担が増すことになったのです。
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パレット化も進める
またこのJAは輸送の効率化を進めるため、パレットと呼ばれる、荷物を載せる資材を導入しました。
これまでは慣例で運送会社のドライバーが無償で積み込んでいましたが、今後はJA側の作業員がパレットを使って積み込むことにしました。
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JA 2024年問題対策費「まかないきれない」
新たな設備の導入や人件費など対策にかかると見込まれる費用の総額は年間6000万円です。JAでまかなう余裕がなく、農家に負担してもらわざるをえないといいます。
JA八戸 営農経済部 販売課 豊川将次 課長
「私どもも何とか協力していきたいと考えているが、いっぱいいっぱいというか、まかないきれない」
肥料も高騰 生産者「割に合わない」
内城さんの場合、年間20トン4000ケースの長ネギを出荷していて、1ケース当たり25.3円負担が増え、年間では10万円以上経費が上乗せされる見込みです。
さらに肥料代の高騰も重くのしかかっています。ほかの産地との価格競争もある中、生産した野菜を値上げするのも難しく、内城さんは今後ますます手取りが減るといいます。
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専業農家 内城さん
「(長ネギの価格が)198円じゃ、とてもじゃないが生産者は(割に)合わない。複雑だね。(ドライバーの負担軽減は)やっていかなけりゃ、そう思うんだけど、それが全部(農家の)負担になってくるから」
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長距離輸送が必要な産地ほどコスト負担は重くなります。2024年問題への対応で増えるコストを誰がどう負担するのか。私たち消費者も含めて考えていかなければならない問題です。
(経済番組 岩永奈々恵)
【2024年5月29日放送】