郵便集配車の「空きスペース」が中山間地域の物流を救う?

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人口減少が深刻な中山間地域では、日々の買い物や物流の維持が難しくなっています。奈良市の月ヶ瀬地区では、地区をくまなく走る郵便局の集配車を物流に生かす新たな取り組みが始まっています。

ネットで注文→郵便局の集配車がお届け

奈良市の東の端に位置する月ヶ瀬地区に、郵便局の集配車が市の中心部から1時間ほどかけてやってきました。

地区の交流施設に運んできたものは…
パンにバナナ、ほかにバターや卵なども

こうした商品は、地区に住む人がインターネットで大型スーパーに注文したものです。

仕組みは、まず地区の人が郵便局と提携しているスーパーにネットで商品を注文します。商品は郵便局を経由して地区の交流施設に運ばれ、それを住民が受け取ります

サービスは月1650円の定額料金です。住民は一般のネットスーパーのサービスも利用できますが、それよりも割安だといいます。

郵便を使ったサービスを利用者した住民の一人は、次のように話しました。

集配車の空きスペースを活用

商店の数が減った月ヶ瀬地区

月ヶ瀬地区の人口は20年で4割ほど減少しました。商店の数もかつての半分以下に減り、住民は不便を強いられているといいます。

課題の解決に乗り出したのが、日本郵便の光保謙治さんです。月ヶ瀬地区にやってくる郵便局の集配車は奈良市中心部との間を1日3往復していて、車に空きスペースがあります。その空きスペースを活用できないかと考えました。

郵便物が減って空きスペースができた集配車。活用を考えた

日本郵便 事業共創部 光保謙治 係長
郵便物自体の取り扱い数が減少の一途をたどっているので、あるもの(集配車)を活用して継続できる手はないか

光保謙治さん

戻る車で農作物運ぶ 販路も拡大

地区への配達を終えて市街地に戻る集配車も、空きスペースを活用します。地元でとれた農作物を奈良市の中心部に運ぶことにしたのです。

農作物は市の中央郵便局に運ばれ、注文した飲食店が受け取りに来ます。

市の中央郵便局に運ばれた農作物

農作物を受け取りに来た飲食店のオーナー
ありがたいですね。新鮮なので、みなさん喜んでくれる

この取り組みは、農作物の販路拡大につながるとして地元農家も歓迎しています。

農家 西本一夫さん
売れてよかった、よし、次の日も頑張ろうと。もっといい新鮮な野菜を今までどおり提供しよう

「全国に横展開できるのでは」

日本郵便の光保さんは、中山間地の物流の維持だけでなく、地域の活性化にもつながると期待しています。

日本郵便 光保さん
今回、奈良でつくれたモデルは日本中のいろいろな地域に拡大が可能だと思っていて、日本全国に横展開できるのではないか

この取り組みは集配車の空きスペースを活用し、新たなコストはほとんど発生していないということです。すでにある配達網を活用していて、ほかの地域でも参考になりそうです。

過疎地域での生活の維持は全国的な課題です。こうした取り組みが解決につながるか、注目されます。
(奈良局 寺井康矩)
【2024年5月28日放送】